◆事業連携で総合力の発揮を
農林中央金庫の鳥井一美常務は、地銀など他業態も農業を地域産業と捉え生産者と企業などの販売先を結びつける取り組みや、融資などが加速していると話し「(来年度からの)次期JAバンク中期戦略では、本来的事業基盤である農業金融サービスの強化を最重点に位置づけている。農業メインバンク機能の強化に集中的に取り組む」とあいさつした。とくに担い手農家のニーズを的確に把握して信頼を確保していくことが課題で営農活動など「JA内の事業間連携をこれまで以上に進め、JAの総合力を発揮して担い手を支援していくことが大切」と訴えた。
来賓のJA全中・前嶋恒夫常務は、戸別所得補償制度の導入では農家への交付金振り込みのJAへの口座開設や、6次産業化促進の主要支援策となる見込みの農業者への融資対応など、JAの担い手金融対策は課題が山積していると指摘。「アンテナを高くし担い手にとってのよき相談相手となってJAの信頼確保につなげてほしい」と激励した。
◆農業者との関係を強化
次期JAバンク中期戦略の柱となる「農業メインバンク機能」の強化――。
後藤正純JAバンク企画推進部担当部長は全県が共同歩調で取り組むこととして▽JAに対するサポート・指導機能を強めるための県域農業金融センター機能の構築・強化、▽将来の地域農業の担い手を「メイン強化先」として選定した関係再構築と強化などの事項のほか、▽JA内事業間連携体制の構築を強調した。
JAでTACなど営農・経済部門との連携を強化し、情報共有や実績把握できる体制づくりへの取り組みが求められる。そのほか法人など大規模農業者の金融ニーズや専門ニーズに対応できる担当者の育成と配置、商品力の拡充、新規就農支援、農商工連携の促進なども取り組み事項となっていく。
後藤担当部長は「JA内事業間連携や、県域単位でのJA・信連・農林中央金庫支店との連携を軸とした農業融資体制を強化し、金融対応力を充実させる」と話した。
【事例報告1】
営農経済専門員と連携
JA庄内たがわ
長南進信用部長
同JAでは合併後の支店統廃合により、組合員情報の収集活動がなければ融資も伸びないとして、力を入れてきた。試行錯誤の結果、融資情報を集めるには融資につながる情報をどう集めるかではなく「集められるものはとにかく集め、そのなかから融資につながるものはないかを検討する」という考えに至った。幅広い情報は部門間相互の情報連携にもなる。
部門間連携のひとつが18年に設置された営農経済専門員、アクトチームとの連携。認定農業者約1800戸を3名の職員で訪問している。1人年間200戸が目標。肥料・農機の普及推進活動のほか、農家とのふれあいを重視した経営や融資、税務相談と情報収集を行っている。 アクトチームから集められた情報は担当課長を通じて支店や営農センターに対応依頼として発信され、そのうち融資など信用事業関係は担当者が直接フォローする取り組みを続けている。
「出向く体制への切り替えが重要」と長南部長は指摘した。
【事例報告2】
県域チームでJAを支援
鹿児島県中央会JA農業法人サポートセンター
桐原彰次長
JAそお鹿児島では平成10年に担い手支援チーム「TAF(タフ)」が設置されている。このチームは組合員のもとに出向く「御用聞き」活動を皮切りに、聞き取った声をJA事業に反映させるため自ら「JA内事業間連携」に走り回っている。その活動が結果的にJA事業の利用増に結びつくという「ブーメラン効果」を生んでいるという。
桐原次長は現在はこのTAFの「県域版」を組織しJAの支援を行っている。スタッフは経済、信用、共済など県域の事業連から集め情報共有化を図りながらJAを支援。「県への丸投げを認めない」ためJAには共同取り組みの合意を求めて稼動している。
JAに対する法人の評価は信用事業では「銀行は来るがJAは来ない」、「銀行並みの融資条件とスピード感を」など。共同取り組みの成果としては法人とJAとの信頼向上、法人の所得向上、JA事業の利用度向上などが出ていると報告した。