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食料自給率、どう上げる? 「50%目標」をめぐり議論  企画部会

 新たな基本計画を議論している審議会企画部会は1月28日、食料自給率目標と食料安全保障について意見交換した。出席した山田正彦副大臣は食料自給率目標について「少なくとも50%まではもっていきたい」と10年後に50%を目標に掲げる方針を明言、22年度から実施する戸別所得補償モデル対策は「その第一歩」と話すとともに、目標達成のための品目別の具体的な目標については検討中であるとした。

各国の食料自給率

◆国民の理解・合意が重要

 この日の会合では農水省からの資料説明を省き山田副大臣のあいさつを受けてすぐに意見交換に入った。
 全中の茂木会長は、「国内資源を最大限活用し、50%以上の目標を意欲的に掲げていくことが大切。麦・大豆・飼料用米の対策の充実を」と述べたほか、農業で生活できるように所得向上対策が打ち出されなければ生産拡大できず、自給率向上は困難になると主張した。
 また、食料安全保障の考え方については、「国内の生産力強化を最優先にすべき。海外への農業投資などの動きもあるが食料安保にとってプラスかどうか。輸入を減らしていくことが大事」と強調した。
 その他の委員からは「50%目標に異論はないが、なぜ50%なのかについての国民の理解と合意が必要」、「50%に向けては相当な努力が必要。あらゆる施策を実践しなければ容易ではないことを確認すべき。その上で国家としてメッセージを出すべき」、「国家戦略局や総理直轄の食料問題ユニットでの検討が必要」、「国がこれまで食料・農業に重きを置いてきたか疑問。国家予算全体のなかで位置づけを」など、国家戦略としての位置づけが必要だとの意見が相次いだ。


◆所得補償で自給率向上?

 消費者委員からは、自給率低下は食生活の洋風化などが原因であるからといって、その向上のために食生活を見直すことには「反発」があると指摘、農業が果している多面的な機能、生物多様性の大切さを具体的に説明することや、ダイエットやメタボ対策といった観点からPRしなければ理解されない、との意見があった。
 また、自給率は農業政策の「ひとつのツール」であって、「需要を起点として生産をする」ことを基本に、経営感覚に優れた生産者の育成や農地の集積などを同時に考えていかなければ「10年後50%に現実味がないのでは」との指摘もあった。
 その一方で、「中国、インドなども経済発展すれば農業人口は減り、世界は食料不足、食料争奪になるのではないかという長期的視点が必要」と指摘し、国内の生産力を上げていくべきとの意見もあった。
 そのほか自給率向上のための品目別の戦略、数量目標や工程表などを早急に提示すべきとの声も出た。
 こうした議論をふまえて山田副大臣は「自給率低下の原因は食生活の変化にあると私は思っていない」と話し、畜産物やパン、麺なども米粉や飼料用米の推進といった方策で自給率を上げていくことが重要で「思い切って所得補償をしていくことで自給率は上がっていくと思っている。消費者の理解が重要」などと話した。
 次回以降は農地や担い手問題などが議論される見込みだ。

【食料自給率目標の策定方向】

 以下のような考え方に基づき、品目別の課題と具体的な目標を検討し、諸課題を達成しつつ目指すべき目標として食料自給率目標を策定することとしてはどうか。
(1) 世界の穀物価格は中長期的にも高い水準で推移。食料自給率が先進国中最低水準にある我が国としては、食料安全保障の観点から、より高い食料自給率水準を目指す。
(2) 食料自給率を向上させるための鍵は水田。農業者の高齢化が進む中で、水田をはじめとする農業の活力を取り戻し、麦、大豆、米粉用・飼料用米の作付拡大や単収増加を図ることに重点を置く。
(3) このため、予算の重点化、効率化等により、農業者の経営安定を図るとともに、農業を魅力あるものとしていく。
(4) 食料自給率の向上を図るためには、国産農産物が消費者に受け入れられることが大前提。人口の減少、高齢化、健康志向の高まり等のトレンドを分析して、戦略的に対応する。
(5) 国民理解を促進するため、国民にとっての意義を多面的に説明していく。

(2010.02.02)