実験の成果は(1)子豚の未成熟な精巣を免疫不全動物(マウス)に移植・成熟化、(2)得られた精子を成熟卵に移植し受精卵を作成、(3)雌豚に受精卵を移植、子豚を出産、というもの。
精巣組織を異種動物に移植し得られた成熟精子から出産にまで至ったケースは、これまでウサギに限られていた。
精巣組織を免疫不全動物に移植するのは、正常な免疫機能があると豚の精巣組織を異物と認識して排除してしまうため。今回使用した免疫不全マウスは、突然変異で免疫担当細胞を作ることができないマウスで、体毛もないことからヌードマウスとも呼ばれている。
哺乳動物の精子の保存方法は、これまではその動物から採取し凍結するのが一般的だったが、今回開発した手法は未成熟精子を異種動物内で成熟させて繁殖に利用できるもの。家畜はもちろん、絶滅が危惧されるアジアの貴重な豚などの新たな保存、利用のために基盤技術として期待される。保存しようという貴重な個体が未成熟であったり、事故で死亡したなどの場合でも成熟した精子を得ることが可能だという。
研究チームは今後、生まれた子豚が順調に生育し、次世代の繁殖が可能であることを証明や、保存できる対象の拡大などに取り組むとしている。