今回のテーマは「EUにおける遺伝子組み換え作物と一般作物との共存研究の成果と課題」で、政・研究・企業という立場から3名が講演した。
「政」の立場からは、欧州委員会農業総局のマニュエル・ゴメス氏が「EUにおける共存政策策定の現状と今後の展望」を、「研究」の立場からはフランス国立農学研究所のイブ・バルソー氏が、EUの多くの国と研究機関が参加して実施されたnonGM作物とGM作物の共存に関する研究プロジェクト(Co-Extra)のこれまでの成果と意義について「EUにおける共存研究の最新動向―Co-Extraプロジェクトの成果より」と題して講演した。
そして「企業」の立場からは、BASF社のマチアス・ポール氏が、EUにおける次の商業栽培のターゲットとされている「遺伝子組み換えバレイショの研究開発と今後の課題―規制および流通の観点から」を講演した。
現在、EUで商業栽培が認められているのはモンサント社のGMトウモロコシMON810だけだ。MON810については当初はEU全体で栽培が認められたが、その後環境影響への懸念などから、オーストリア・フランス・ドイツ・ギリシャ・ハンガリー・ルクセンブルクで栽培が禁止された。また、イタリアとポーランドではMON810だけではなくGM作物そのものを栽培禁止している。
スペインでは飼料用としてMON810が栽培されているが、GMもnonGMも混ぜて流通しており、「ヨーロッパにも共存はない」という見方を示す人もいる。
BASF社のGMバレイショは、「ポテト・スターチ」として製紙業界や接着業界をターゲットとした「工業用」のバレイショだが、食料用と混ざったときに備えて、EFSA(欧州食品安全機関)で食品としての承認を得ようとしていると説明。問題ないことが確認されているので、近々承認される見通しであること。2014/2015年には上市する予定だという。
BASF社ポール氏の説明は、欧州におけるバレイショの食品としての重要性を強調するなど、当面は「工業用」だが、GMへの抵抗感が薄れれば即食用として登場するという印象だった。
(写真)GMバレイショの研究開発について講演するマチアス・ポール氏