農政・農協ニュース

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人工林の間伐は生物多様性を高める  森林総研の研究

 (独)森林総合研究所は、人工林の間伐が林内植物の種構成を変え、昆虫の種類と個体数を増加させて、森林の生物多様性を短期的に高めるという研究結果を発表している。

 研究は、林内の下層植物と昆虫(ハナバチ、チョウ、ハナアブ、カミキリムシ)の種構成、種の数、個体数を、間伐を行った人工林と行っていない人工林で比較したもの。
 植物は、間伐1年後と3年後の比較で、ともに種構成が変わったことが分かった。ただ、種の数と、植物が地面を被っている割合(被度)には大きな違いはなかった。メンバー交代はあったものの、数自体に変化はなかったという結果だ。
 一方、昆虫は間伐1年後では種類も増え、総個体数も多くなっていた。ただし、3年後にはハナバチを除いて種数に大きな違いはなくなり、カミキリムシでは総個体数に違いが認められなくなった。
 研究の結果は、間伐は人工林の生物多様性に一定の影響を与えることを示したものだが、昆虫ではその影響は短期にとどまるなど、対象とする生物によって異なることも明らかになった。
 世界的には森林が失われることにともなって生物多様性も失われることが問題になっている。日本は国土の67%が森林だが、このうち41%が人工林。このため生物多様性の保全と調和した森林管理も求められている。
 今回の研究は間伐と生物多様性の関係を初めて明らかにしたもので、同研究所では「地域内で計画的に間伐することが生物多様性を高める有効な手段であることを示した」としている。
 実際に間伐を進めるにはコストがかかるが、今回の研究は「生物多様性」の観点から財政支援をする科学的な根拠ともなり得る。今後も環境支払いで農山村を支援するといった施策が国民合意となるための科学的研究がさらに期待される。

(2010.02.26)