◆生産者の手取り確保策を
牛乳の消費減退で生乳の需給緩和が大きな問題となっているなか、特定乳製品(バター、脱脂粉乳)に向ける加工原料乳の限度数量については現行の195万t維持、あるいは引き上げを求める声もあったが、バター、脱脂粉乳の在庫が積み上がっていることと、生産者団体が22年度の計画生産数量を前年度比98.7%と減産型としたことなどをふまえて、10万tの削減を諮問した。
食肉や肉用小牛などの政策価格については、飼料価格の落ち着きなどの下げ要因がある一方、農具費や労賃など上げ要因もあって相殺され据え置きの諮問となった。
審議会では、飼料価格が一時より下がったとはいえ高止まりしており、販売価格は低迷、生産者の所得が確保されるかどうかを懸念する声が出た。
従来はある程度、関連対策が明らかになったなかで審議会が開催されたが、今回はそこが見えないなかでの審議となり、諮問について「妥当である」との判断が難しいという指摘もあった。
また、こうした意見を建議として答申に付すことも今回は見送られ意見の概要としてまとめた。
主な意見は▽乳用牛の頭数を減らして減産すると将来、需要が増加しても生乳供給ができない。頭数を減らすことは適当ではない、▽チーズ、生クリーム向け生乳の需要創出対策を緊急に措置することにより現行手取りが下がらないようにすべき、▽消費拡大活動や酪農体験活動への政策的支援を行うべきなど。
食肉関係では▽マルキン等の経営安定対策は重要。きめ細かい支援を、▽肉用小牛対策は繁殖農家の物財費と家族労働費の相当部分が確保される対策が必要、▽養豚対策では肉豚の生産コストが確保され生産者と国の拠出を1対1に。地域独自の取り組みもできるようになどがあった。
鈴木宣弘部会長はこの意見については「意味あいは建議」と同じと、答申に際してはこれらの農家の手取りが減少しないように求める意見とセットであることを強調した。
◆「政治主導の一言につきる」
今回の審議会で建議を行わなかった理由は、審議会後に副大臣主催の与党議員との政策会議がセットされており、従来のように意見を建議として取りまとめる起草委員会の作業時間がないため。部会運営の効率化だという。
今後の審議会のあり方について鈴木部会長は「関連対策が決定されていなくても、それなりに示して(諮問と)セットで議論できればいい。今回はそこが課題になることが鮮明に出てきた」と話す。
しかし、審議会後の政策会議では答申と意見の概要を山田副大臣が口頭で与党議員に説明し、さらに政務3役で詰めてきたマルキン一本化や生乳の需要創造対策の方向など関連対策の仕組みを示し、残りは具体的な予算案を詰めるだけ、というものだった。
これには与党議員から「なぜ相談なしに決めるのかと怒られました」(山田副大臣)。
結局、「答申を受けて政務3役が決定」というのは既定路線であり、審議会の建議などはもちろん与党議員からも十分に意見を聞くということではなかったのである。
翌日の関連対策決定の記者レクでも審議会が建議を行わなかったことについて農水省の畜産担当課長に質問が飛んだが「政治主導の一言につきる、ということです」との回答だった。