篠原氏はEUで直接支払い制度が導入されたのは、価格支持政策では生産量の多い大規模農家にメリットがあり、そのうえ作物が過剰になって小規模農家が不利になることから「中山間地域などの小さな農家を救うための政策」として導入されたことを強調した。
その点で前政権が規模を基準に政策対象を選別したのは、“基本的に直接支払い制度ではない”と批判。戸別所得補償制度の発想の原点は、農業の多面的機能も評価して小規模農家に直接支払いし、危機的な日本農業の生産力を維持することにあったとする。
一方、自給率を向上させるためには、米政策偏重で「猫の目農政の対象にすらされなかった麦・大豆などを作ってもらう」ことへの転換が狙いだったとし、長く続いてきた「作るな」という米の生産調整政策から自給率を向上させる作物を「作ってくれれば支払う」政策への転換をめざすものと話した。
そのうえで、今回のモデル対策の検討過程では、米以外の交付水準を有利にし、米以外の作物で成り立つ経営への転換を誘導する仕組みを考えるべきとの提案もしたという。また単価は一律とし生産者が地域にあった作物の組み合わせを判断、それに対して直接支払いが行われるという仕組みをめざすべきで「いわば地方分権ならぬ農民分権」と強調、制度設計に時間をもっとかけるべきだなどと話した。