「市場中心の金融システム」との印象が強い米国にもクレジットユニオンと農業信用制度と呼ばれる協同組織金融機関があるーとして2つのビジネスモデルに焦点を当て、また米国金融危機の影響や当面の課題などを概観している。内容の一部を紹介する。
【クレジットユニオン(CU)】
商業銀行などと同じように組合員から預金を受け入れて金融サービスをしているが▽非営利で公共目的がある▽組合員は理事選出などで1人1票の投票権を持つーといった協同組織としての特色がある。
CUは法人税が免税となっているため商業銀行と比べて預金金利を高く、貸出金利を低くできるので、これが競争優位の1つとなっている。
2008年末の組合数は8088、組合員数は9073万5000人余で米国人口の約3割を占める。
20世紀初頭から教会や職域を中心に個人消費者ローンを提供してきたが、近年は住宅ローンや不動産融資などにも需要が広がって多額の運営資金が必要となったことや、非対面型チャネルの導入などで設備投資額が増大していることなどが組合合併を促している。
金融危機でCUも厳しい状況に置かれ、それぞれ対応しているが、それでも全体のローン残高に占める延滞率・純貸倒損失率は07年以降急速に増加し、09年9月では組合員1000人に占める破綻者は3・7人という高さを記録した。
【農業信用制度】
農業者や牧場経営者、漁業者をはじめ、農協や漁協、農業関連事業などに融資をしている金融機関だ。組合員数は40万人余で農業者の約2割におよび、農業金融には不可欠な存在。組合数は90。
同制度の組合は借り手が所有し、組合員は1人1票を持つなどの協同組合組織だが、CUと異なって預金取扱金融機関ではないため債権を発行して貸出資金を調達している。政府支援企業なので相対的に低い利率での資金調達が可能だ。
この制度は金融危機の影響が比較的少ないといわれてきたが、08年にはローン残高とともに、元利金の返済が90日以上滞った債権も拡大し、ローン残高に占める割合は1・44%に上昇した。
要因には家禽類の消費とエタノール市場の低迷がある。また09年には農地価格が下落に転じるなど制度を取り巻く環境は変化しており、それが制度の今後の経営にどのような影響を与えるかが注目される。