◆地域おこしにおけるJAの役割とはなにか
JA事業や経営の見通しが依然厳しいなか、さらなる合理化をすすめるか、JAの原点に立ち返った取り組みをすすめるか、経営者の判断が問われる時代になった。
組合員の所得拡大のためのブランドづくりや販売戦略、また少子高齢化がすすむ社会でJAは地域づくりにどう取り組むか、などJAが直面している課題について、組織づくりや人材育成の視点から実践事例の報告と相互討議を行った。
代表リポートで今村奈良臣JA総研所長は、現在総研内でプロジェクトチームを結成し研究している「日本型農場制農業」や、広島県世羅町の町全域を農村公園にしようという取り組みなどを紹介した。
初日には、▽あんぽ柿を中心にしたJA伊達みらいのブランド戦略、▽JA氷見市のハトムギ産地形成と農商工連携の取り組み、▽女男共同参画で地域福祉に取り組むJAコスモス、▽パルシステム生協の仕事おこしと地域おこし、など4つの事例報告があった。
2日目には守友裕一宇都宮大学農学部長が、「農産物価格の低迷などで農村が自信を失い、人や土地の空洞化がすすんでいる。自信、誇りを取り戻し人材を育成するにはどうすればよいか」などの問題提起とJAへの提言で講演があり、分科会と相互討議を行った。
【事例報告】
「JA伊達みらいにおける産地づくりと組織づくり」
斉藤一郎 JA伊達みらい常務理事
JA伊達みらいは規模拡大で販売メリットを高めようと1995年に6JAが合併してできた。品質と価格格差の是正をすすめ、あんぽ柿部会が統一されたのは2007年。今では取扱高31億円のモモに次いで、取扱高20億円の産地に成長した。
06年には担い手対策としてJA出資型農業生産法人「みらいアグリサービス(株)」を設立。遊休農地にトマトを作付けし、無塩100%「完熟栽培のとまとじゅーす」を発売するなど多くのオリジナルブランドを開発している。
「ハトムギによる産地形成とJA主導の農商工連携」
川上修 JA氷見市代表理事組合長
JA氷見市は福祉事業、保育園、直売所などを立ち上げJAとかかわる人を増やすことで事業を均衡して拡大している。また、業種を超えて地域全体で連携する「オールひみ」の取り組みや、職員約380人で年間教育費2000万円以上という人材育成強化など、財務より収益基盤の強化をめざす取り組みが基本戦略だ。
地元富山県の飲料メーカーとの連携で2006年に発売したペットボトル飲料「氷見はとむぎ茶」は、09年に年間200万本を売るヒット商品に。そのほかブランドの氷見牛を使ったレトルト商品「氷見牛カレー」も好調だ。
「女男共同参画によるJAの助け合い活動と仕事興し」
中村都子 JAコスモス生活福士部
中村さんは「営農と生活は車の両輪と言われてきたが、片方の車輪(営農)は強固なのに、もう一方(生活)は三輪車」だと感じたという。1986年、当時はまだ一般的でなかった農産物直売所「はちきんの店」を設立し、農家女性が直接収入を得る機会を増やした。
女性による暮らしの助け合い組織「にこにこ会」を発足させたが、これからは女性だけでなく男性の共同参画も必要だと、男性だけの助け合い組織「赤い褌隊」を設立した。JA主催のあぐりスクールで、子どもや農業初心者に農業技術や伝統を伝える活動などを積極的に行っている。