農政・農協ニュース

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「国産農畜産物の販売力強化」が共通事業目標―JA全農の新3か年計画

 JA全農は3月24日の臨時総代会で「変革・創造・実践」をスローガンとした新3か年計画(平成22〜24年度)を決めた。同計画では全事業を通じて取り組む最重点課題に「国産農畜産物の販売力強化」を掲げている。担い手と実需者双方のニーズを結びつける「生産と販売のマッチング活動」に全力を上げる方針だ。

◆激変する事業環境

 JA全農の現行3か年計画「新生プラン」(平成19〜21年度)では、5つの使命の実践を掲げていた。
 それは(1)担い手への対応強化、(2)生産者・組合員の手取り最大化、(3)消費者への安全・新鮮な国産農畜産物の提供、(4)生産者・組合員に信頼される価格の確立、(5)JA経済収支確立への支援、である。
 これらの使命は今後も変わらないものの、事業を取り巻く環境は大きく変化している。
 食料自給率の向上は差し迫った国民的課題であるにも関わらず、農業現場では就農人口の減少、高齢化の進展で農業生産基盤の弱体化が進行している。
 一方、消費者の動向は健康志向とともに低価格志向が一層強まり、安全・安心、さらに安価な食品へのニーズが高まっていることに加えて、最近のデフレ経済の進行で農畜産物価格は低迷している。
 こうしたなか、農政面では、戸別所得補償制度の導入による農政転換をはじめ、WTO・FTA交渉加速化の可能性があるなど、JAグループは新たな局面に立たされている。また、農地法改正もあって、大手量販店や異業種が農業ビジネスに参入してくるという事態も起きてきている。
 
◆生産から販売までを一貫事業で

 JA全農は、このように事業環境を認識し新3か年計画では、組合員、JA、そして取引先から期待が大きい「国産農畜産物の販売力強化」を全事業を通じた共通の目標に掲げた。
 販売事業では、既存取引先への販売拡大、国産農畜産物の消費拡大策に加えて、大消費地向けの直接販売や産地と実需者の結びつけを基本にしたサプライチェーンの構築といった「生産から販売までの一貫した事業方式」の拡大と転換をはかる。
 大消費地では、これまで重点的に取り組んできた複数品目の総合販売、全農フェアの開催やトップ商談の実施などで主要取引先への営業活動を発展させ、外食・業務用を含め実需者への提案と営業活動を強化、直接販売の拡大をはかる。
 また、定質・定量と差別化商品に対するニーズに対応した複数産地による周年対応や生産から流通・供給までを一貫して担う取り組みが拡大してきていることから、TACの活動などを基軸に定着化を図っていく。
 米穀事業では、精米流通への転換を促進するため、精米向上の段階的な再編を進めグループ一体となった販売促進を行う。
 園芸事業ではJA全農青果センターと県本部直販施設との間で商品企画や供給面での連携による直接販売、加工・業務用タマネギ・キャベツなどの産地から実需者までの一貫した取り組み、さらに実需者ニーズに基づく生産提案も積極化し契約的取引の拡大による販売力強化もめざす。
 畜産事業では、相場の影響を受けにくい安定価格帯取引や県域ブランドを活かした地域での地産地消取引を拡大。酪農事業では、生乳の需給調整機能の強化をはかり、生乳・乳製品・業務用牛乳の販売を拡大していく方針だ。

◆生産コスト低減で生産基盤を維持・拡大

 営農・購買事業では、生産基盤維持・拡大に向けた生産コストの低減や購買品目の取り扱い強化によるシェア拡大によって、間接的に販売力強化をはかる。
 耕種分野では低成分肥料・農薬大型規格・ジェネリック農薬など低コスト資材の普及拡大、広域物流体制の整備など間接コスト削減などは生産者からも高い評価を得ていることからさらに取り組みを進める。また、低成分肥料、PKセーブは土壌分析結果をふまえた銘柄提案を行い面的拡大をはかる。
 畜産分野では飼料原料の海外産地の多元化、飼料工場の再編による製造・物流コスト削減に引き続き取り組む。
 また、生産性向上対策では、新たな営農・技術センターを核とした新品種開発、技術開発も最重点施策としている。

◆JAと一体となった経済事業を追求

 購買品目の取り扱い強化に向けた重点施策のひとつは「JAと一体となった経済事業方式の確立」だ。これは農機・物流などの拠点型事業が対象で、県域一体化を促進し組合員・利用者へのサービスレベルを維持するとともに、JAの収支改善もはかる。SS、ガス事業、Aコープ店舗事業でも同様の方向に取り組み競争力の強化をはかる。
 肥料・飼料、石油事業では新たな輸入元の開発、多元化などにより安価で安定的な原料確保を進める。農薬では系統独自に開発した水稲除草剤(AVH-301)の優位性を訴求してシェア拡大をめざす。

◆広報活動の強化も重点施策

 「国産農畜産物の販売力強化」という目標を実現するため、新3か年計画では各事業で(1)環境変化に対応した既存事業の見直し、(2)これまで培ってきた事業基盤・仕組みを活用した周辺事業の掘り起こし、(3)組合員・消費者・取引先のニーズを捉えた新規事業の開発が重要になると整理している。
 そしてこれらを支えるためには、有効な投資・研究開発には経営資源の集中的投下も必要であることから、事業管理費の節減とともに、財務体質の改善と経営基盤の拡充を進める。
 また、環境問題への対応として環境に配慮した生産資材の普及拡大や新エネルギー関連商品の事業も強化。国産農畜産物の消費拡大を目的とした広報活動にも力を入れる。
 広報活動はJAグループの統一広報活動にも取り組むが、国産農畜産物の消費拡大とあわせ、「JA」の社会的価値をPRする広報にも取り組む。

(2010.03.26)