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農法の明示で価格差がつく 生物多様性保全米にも差別化が必要  農水省が研究まとめる

 生物多様性に配慮して作ったおコメはより高くで買ってもらえるという研究を農水省の農林水産政策研究所が4月9日明らかにした。

 しかし、配慮はしていても、具体的に農薬の削減量などを明示しないと付加価値はつかないことなどもはっきりした。
 生物多様性の保全に配慮したコメは「生きものマーク米」と呼ばれる。その生産は37事例に及び、販売価格は同じ産地の慣行栽培米よりも5kg当たりで1000円以上高かったものがある一方で全く価格差のないものもあった。 同研究は代表的事例として兵庫県豊岡市のコウノトリ保全に配慮した「コウノトリ育むお米」の購入者アンケート調査を行い、その結果を分析した。
 それによると購入者はコウノトリ保全の知識がある、ないにかかわらず農薬使用量の削減に多くの金額を支払ってもよいと考えていることがわかった。
 また知識のある回答者は追加的に支払ってもよい金額が大きく、水田で見かける生物数の増加については知識を持つ人だけが追加的な金額を支払うとの分析結果を得た。
 これらから「生きものマーク米」には話題性があるが、作れば高く売れるわけではなく生産から販路までの戦略的な取り組みが必要であり、また同マーク米の高付加価値化のためには減農薬・減化学肥料や無農薬、有機栽培などの差別化が必要とした。
 詳細については、4月23日15時から同省内の農林水産政策研究所セミナー室で客員研究員である矢部光保九州大学・院教授らによる公開セミナーを開く。

◆消費者に基準や定義を明確に知らせる

 国内のコメ生産量から見れば「生き物マーク米」はまだごくわずか。生産地は東北・北陸に多く、関西・九州に少なかった。また、1戸の農家が1・5haほどの面積で行っている事例から、150戸が集まり470ha余で取り組んでいる事例まで形は様々だ。
 主な保全対象はコウノトリ、トキ、マガンなどの鳥類が多いが、実際には鳥類の餌となる魚類や昆虫類なども保全しているものがほとんど。
 慣行栽培米との価格差がない事例を見ると直販で中間マージンを廃して利益を出しているものがある一方で、大量に生産しながら差をつけられずに卸しているものも見られた。
 その中には生きものマーク米の基準と定義を明確化できていない事例があった。
 このため、単に生きもの保全に役立つと訴えるだけでなく、どのような生産・栽培方法を採用したのかを明確にし、その取り組みについて消費者に広く知ってもらうことが、コメを高く買ってもらうにつながっていると結論づけた。


農林水産政策研究所の研究結果

(2010.04.14)