1日めは「JAのミッションとしての営農事業」、「営農事業のカギを握るマーケティングの実際」についての2部構成で各報告があった。
「営農事業を本物にするJA営農指導員の役割」について話した岩手大学の木村伸男教授は「今後、日本農業は生産力の低下と急速な世代交代に陥るとみられている。こういった厳しい状況を打破するためには営農事業を見直したJA経営の確立が必要」と指摘。そのうえで「営農事業の本来の意味は“ビジネス農業の営み”だ。新たにめざすべき営農指導とは、社会のニーズを地域資源とどう結びつけるかを開発し、農業者を指導していくこと」だとし、営農指導員に今後必要な条件として▽ビジョンや夢、志を持つこと、▽苦情から社会のニーズをつかんで開発する能力、▽顧客を見つける、の3点を強調した。
◆集落営農を中心とした農業振興
JAいわて花巻企画管理部企画開発課課長の瀬川公氏は、集落営農への取り組みなどの内容で事例報告した。
同JAは2008年に広域合併したが、1998年から集落営農の組織づくりに力を入れてきた。JAや花巻市は、担当者制などによる手厚い集落営農支援で農家組合をバックアップ。これらの取り組みは先進事例として県のモデルにもなった。
とくに米依存からの脱却をめざし“雑穀”で農業振興の実現を図ってきた。今では日本一の作付面積を誇る。しかし政権交代による新政策が産地に打撃を与えた。転作作付を主とする雑穀は、これまで産地確立交付金の対象として10aあたり最高4万3000円が助成されていたが、今年度から実施されるモデル対策の水田利活用事業では「その他作物」とされ、助成金は1万円に減額。これを受け、市は担い手農家が昨年度並みの収入が確保できるよう独自助成を予算案に盛り込んだ。戸別所得保障制度へもJAの全職員らが各集落に向けて支援を行う体制づくりを行っている。
◆「産直」とは安く仕入れる手段ではない
マーケティングの立場から報告したのはパルシステム生協連食料農業政策室室長の高橋宏通氏。「デフレ化の野菜産直」をテーマに産直への考え方や取り組みについて話した。
デフレによって消費者は安全より低価格を求める傾向にある。一方、高品質な商品もきちんと情報提供すれば少し高くても買ってくれる人がいる。これからの消費動向はこの2極化になるだろう。高品質を理解してもらうには時間がかかるが、一度ファンになった消費者はなかなか離れない。
産直とは安く仕入れる手段ではない。農と食の現場を近づける仕組み。農は食べ物を調達する以外に、生きものを育み豊かな環境を作る、といったさまざまな恩恵を与えている。その広い価値をもっと発信していくべき。その価値がわかれば安さ競争に走ることはない。