この豚は世界では2例目の体細胞クローンで、2000年7月に生まれ、「ゼナ」と名づけられた。
1例目の「ドリー」と呼ばれた羊が6年7か月で死亡したため体細胞クローン動物は短命ではないかとの議論があったが、ゼナのほうは約10年間、正常に発育してきたことから体細胞クローン技術で誕生した動物が必ずしも早く死ぬわけではないことが示された。
ゼナはメスで梅山豚(メイシャントン)という品種。同研究所とプライムテック?、農研機構・畜産草地研究所が飼育した。
順調に成育し、14頭の正常子豚を出産(人工授精)して繁殖能力が正常であることも示したあと、3月18日に体細胞クローン豚としては世界最高齢の寿命を終えた。
ほ乳類の体細胞クローンは1996年に世界で初めて羊のドリーが誕生してから山羊、牛、マウスなどで成功例が得られている。
豚の場合は英国と日本で相次いでクローンが誕生した。
豚は臓器の大きさや代謝系などが人間に近いことから、この成功を受けて、人間の遺伝子や疾病に関係する遺伝子を組み込んだクローン豚を作り、新たな医療技術の開発に利用することへの期待が高まっている。
体細胞クローン動物とは体細胞(生殖細胞以外の細胞)の核を、核を除いた未受精卵に導入し、仮親に移植することにより誕生する動物。
(写真)体細胞クローン豚「ゼナ」の誕生時(左・体重1.2kg)と9歳時(右・体重約180kg)