5月20日には川南町らの町長と東国原知事が、現地対策本部の山田農水副大臣と小川総理補佐官と会談。町長らは19日に全頭を対象にしたワクチン接種について、国が地元の理解を満足に得ずに発表したことに対する疑義とともに、生活支援、経済支援策が十分でないことを表明した。
本紙は現地で取材。午後会見した東国原知事は「地元もワクチン接種に反対しているわけではない。われわれもここで封じ込めるという意志は強く持っており、関係首長とも申し合わせた」と話しながらも「しかし、農家の方の感情、歴史、育ててきた労力がある。それを一瞬にして無にするわけですから。相当な覚悟が必要だ」と強調、「たとえば予備費から1000億円をするという報道が一時あったが、本部長は総理だから、保障はきちんとやりますからご協力をいただきたい、ということをもう一度明言していただきたい」などと述べた。
また、埋却地に県有地である県立農業大学校を提供すること自体についてはやむを得ないとの考えだが、これまで自力で埋却地を探して処理をしてきた農家への支援策も合わせて求めた。
ワクチン接種は法律上は強制執行ができ、拒否した場合は罰金処分がある。「私は難しいと思う。罰金を払えばいいという人が出てきたら……。ワクチンはポツリ、ポツリと打っても仕方がない。見切り発車ではできるものではなく、最初から保障とセットで示さなければ合意は得られない」と繰り返し強調した。
21日午前の会見で赤松農相は以下のような具体策を地元に示す考えを明らかにした。
(1)殺処分奨励金は家畜ごとの時価評価方式で全額を保障、(2)ワクチン接種後から殺処分までの期間にかかる飼育コストは実績払いで支援。(一日単価×日数)。(3)生活対策として病死した場合に支払われる家畜防疫互助金と同額の支援を実施、(4)埋却地の経費対策として地代相当額と環境対策経費を支援、(5)経営再開支援は家畜をJA等が導入し農家がリースして経営再開する取り組みの支援、の5項目を示した。
赤松農相は予算総額については「分からない」と述べるにとどめた。21日午後に宮崎県で知事と地元首長らに提示して協議する。赤松農相はワクチン接種について「今日からでもはじめたい」と述べた。
宮崎県の口蹄疫被害は5月20日現在で159例確認されている。殺処分対象は13万258頭(牛1万5674頭、豚11万4579頭、山羊5頭)となった。
(写真)取材を受ける東国原知事(=本紙記者撮影)