◆金融市場は落ち着く
農林中央金庫は昨年3月にJAグループなど会員から1兆9000億円の増資協力を得るとともに、21年度から4年間の経営安定化計画をスタートさせた。
会見で河野良雄理事長は「まずは順調な滑り出しができた」と語った。
実体経済は依然として厳しい状況にあり、金庫の与信関係費用は増加したが、河野理事長は「各国の財政金融政策が奏功し、金融市場は徐々に落ち着きを取り戻し、安定的な資金収支を確保することができた」とした。
また、株式市況の回復とクレジットスプレッドの縮小を主因として有価証券の評価損は前年度末対比で1兆4870億円改善。評価損は6058億円まで縮小した。 その結果、自己資本比率は19.26%となり前年同期比3.61%増加。また、自己資本の基本的項目(Tier1)比率も13.88%と同4.27%増加した。
「今後、市場の混乱があっても安定的な運用が可能な水準を維持していると考えている。これも会員の増資への協力をはじめステークホルダーのみなさんのご支援の賜物。改めて感謝したい」としながらも、わが国を含め世界経済の先行きには依然として不確実性が存在していると指摘した。
「金庫の財務状況の見通しについては消して楽観視できる状況にはないと考えている。そのため平成22年度においても適切な財務運営を心がけ目標経常利益水準500〜1000億円を確保していく」と話し、またJAバンク、JFマリンバンク、それぞれ一体となって農林水産業の発展のための取り組みを一層強化していく考えを示した。
当期純利益は295億円。総資産額は68兆4703億円で前年度より5兆9700億円増。純資産額は3兆9316億円となった。ただ、黒字回復しても配当可能利益水準ではないため前期に続き今期も無配となる。
(写真)決算報告の会見を行う河野理事長(写真・左)と宮園専務理事
◆農林水産業への支援
経営安定化計画のなかでは、「協同組合中央機関として農林水産業発展のための機能発揮」も掲げ、農林中央金庫としても法人などに直接融資する事業展開も目標としている。
河野理事長によると21年度は農業生産法人約300社をリストアップし、このうち31法人と新規取引を実現したという。また、農業だけでなく広く林業、水産業も対象にした農林水産環境ビジネローンは、昨年9月から今年3月までで200億円の実績を上げた。そのほか飲料メーカーから果実などの原料調達ニーズがあるケースでは産地との結びつきを図る商談会を開き、実績に結びつけているという。
宮崎県で発生している口蹄疫については「農協系統だけで対応できるものではなく、まずは国に対策を要請していく」とするとともに、支店(宮崎、熊本、鹿児島)・本店に相談窓口を設置しているほか、10名程度の作業要員の派遣応援もしているとして「喫緊の資金ニーズ、返済猶予などに対応していく」と話した。