事業仕分けは第1弾で国の事業を中心に取り上げ、第2弾では独立行政法人(独法)と公益法人を対象とし、5月25日に終了した。 農水省所管では計10法人・22事業について規模縮減などの判定が相次いだ。
農業者やJAの反応をインターネットで見ると、独立行政法人の農畜産業振興機構が行う野菜の経営安定対策を縮減とした判定に対する反発が目立った。「必殺仕分け人の……価格安定潰し」とか「政府は農家の苦労をわかっていない」(群馬からの発信)などと怒る声もあった。
反対に消費者側からは「百姓が(野菜を)作り過ぎて値段が暴落したから補償して下さいっても知るかよ、そんなの」といった論調も出ている。
農業サイドはこうした状況の中で縮減や廃止に対する巻き返しを図ることになるが、すでに行動を起こした分野もある。
4月27日の仕分けは野菜のほか畜産の経営安定対策も縮減とし、またプロ農家育成が目的の農業者大学校(茨城県つくば市)には廃止の判定を出した。
同大学校の同窓会はこれに反対。存続を求める要請書を赤松広隆農相に提出した。一方、在校生たちも2万人の署名を集めて運動の輪を広げている。
◆巻き返しも起きる
事業仕分けには弱者に厳しく格差拡大につながるマイナス面も多い。また農業予算では戸別所得補償制度の財源捻出のために、ほかの予算を削っているという指摘も出た。仕分けの問題点を改めて指定野菜価格安定対策に見てみると……
この事業は、指定野菜が市場で値崩れした際に差額の一部を生産者補給交付金で穴埋めして農家の経営安定を図るものだが、仕分けの結果は▽規模縮減▽制度設計見直し▽不要資産の国庫返納―という判定になった。
補給交付金は国県などと生産者が資金を積み立てて支出しているが、積み立て規模に比べて支出実績が低い―などがその理由だ。
しかし、この制度を利用できるのは指定野菜生産に限られ、また産地規模が大きいことなどの要件が必要だ。このため制度加入率の低い産地も目立つ。
そこでJA全中は先に、同制度の充実によるセーフティネット機能の強化を平成22年度予算案編成に向けて政策提案した。
指定野菜の追加(現在は14品目)▽補償基準額の算定基準90%の引き上げ▽認定農業者の割合に応じて補てん率に差をつける「産地区分」の廃止などだ。
制度の拡充や改善を提案したわけだが、現実は反対に縮減の仕分けとなった。
◆政策提起が課題に
これに対するJAの声としてはキャベツの大産地を抱えるJA嬬恋村(群馬)の場合、「セーフティネットとしての制度だから補給交付金は微々たる金額だが、これがあるから何とか野菜作りをやってこれたのに…」(役員)と声は冴えない。
同JAは制度の利用率をもっと上げるため「県と話し合って今年度の県予算を少し増やしてもらったが、今後は民主党議員とも議論する必要がある」という課題も挙げた。
またJA愛知みなみの場合は「縮減が生産者側の負担増につながらないようにしたい。この制度のメリットを守っていきたいと考えている」(担当職員)とのことだ。
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独法・公益法人の改革は当然だが、その事業仕分けが野菜や畜産の経営安定対策削減に及んでは、財務省などの仕分け対象選択に不信の目が向く。ムダ遣いはほかにもっとたくさんあるとされているが、聖域となってしまって、ほとんど手付かずの予算も多い。
政権交代で、自民党農政からの脱却に期待の声は大きかったが、今は民主党農政に対する期待はしぼんだ。だが後退は許されない。JAとしてはそれぞれの産地の実情に対応した自前の政策提案づくりなどが求められている。
(写真)価格安定制度の先行きに不安も起きている野菜作り(=長野のキャベツ畑から)※本文とは関係ありません