日本のイネの品種改良には150年の歴史があり、多くの品種が育成されて新品種に置き換わってきた。その中で1956年に開発されたコシヒカリの食味に対する評価は抜群で、ここ30年にわたって栽培面積と生産量の王座を保っている。
今回の解読によってコシの特徴を決める遺伝子が見出しやすくなり、今後、品種育成を効率化する上で重要な情報基盤になるものと期待されている。
同研究所は先に「日本晴」の全ゲノム塩基配列を解読した。今回はコシの配列が明らかになったことで、DNA配列の違いを容易に見出すことができるようになった。
品種識別の精度が飛躍的に高まり、植物品種保護やトレーサビリティーの高精度化に貢献すると考えられる。
またコシヒカリのゲノムの起原を明らかにしたが、これは日本のイネにおける品種改良の歴史を遺伝子レベルで明らかにした初めての成果だとされる。
これによるとコシは「朝日」「亀の尾」「愛国」といった100年以上前の有名な品種を含む6種の在来品種からまとまったゲノム領域を受け継いでいることがわかった。
コシを親に持つ「ひとめぼれ」「あきたこまち」「ヒノヒカリ」の3品種に伝達されたゲノム領域を抽出した結果、あきたこまちとひとめぼれはゲノムの80%を、またヒノヒカリは60%をコシと共有していることが明らかになった。
こうしたいくつかの調査結果から、日本の品種改良では遺伝的多様性が失われつつあることもわかった。
このため今回の解読は、多様性を保つ新しい育種法としても利用できると期待される。