◆地域経済統合に意欲
シンポジウムは日豪経済委員会が主催し「地域経済統合とFTA・EPAを通じた日豪関係の強化」をテーマに両国から政治家や研究者らが出席した。
わが国は東アジア共同体構想、豪州はアジア太平洋共同体構想を提唱しているが、岡田外相は「将来の地域枠組みに関する議論をさらに深めていきたい」と話し「地域統合の流れを根底で支えるのがFTA・EPA網の急速な広がり」と強調、豪州、韓国、インド、欧州などとのEPAを政治主導で積極的に推進していくと話した。また、環太平洋パートナーシップ(TPP)への関与も検討したいと意向も示した。
そのうえで、日豪EPAは「二国間の文脈を超えて地域の経済統合をさらに進め、将来にわたる地域の平和と繁栄を確保するという戦略的重要性を持っている」と指摘し「センシティブ分野(=農業)への対応をどうするかという困難な問題はあるが、日豪EPAは民主党政権の優先課題。私自身も大局をみて引き続き締結に全力を上げていく」と述べた。
豪州のサイモン・貿易相も基調スピーチ。「農業問題という困難があるのは事実。にもかかわらず岡田外相はトッププライオリティのひとつだと明言してくれた。歓迎する。両国とも本気であるということ。農業分野にも取り組むことができると確信している」などと述べ、農業分野については「両国のポテンシャルに目を向け、日本は物品貿易だけではなく(アジア太平洋地域の)食料安保の観点から協力すべきだ」と強調した。
(写真)講演する岡田克也外務大臣
◆食料安保を豪州強調
パネルディスカッションでは山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹が参加。関税を削減して農産物価格を下げ、農業の規模拡大が進むよう大規模層に限定して直接支払いすべきとの持論を展開。「価格を下げて輸出することで460万haの農地を維持すべき。人口減少社会(の日本)の食料安保は自由貿易だ」と強調した。
豪州からはデイビッド・クロムビー全国農業者連盟会長が出席。両国には季節や品目の違いがあることから「豪州農業はあくまでも日本のニッチ(すき間)市場をめざす。相互補完的だ。グローバルな食の安全保障の観点からも強力なFTAをつくるためには農業こそ交渉の中心になるべきだ」などと話した。
ただ、その他の出席者からは「2国間ではなく広域の視点を持つべき」(藤田純孝・伊藤忠商事相談役)、「日本の対豪輸入に占める有税農産品の比率は8.7%(07年)にすぎない。100%の締結を望むべきではない」(中富道隆・日本貿易振興機構副理事長)などの主張もあった。
*TPP(環太平洋パートナーシップ)=現在の参加国は豪州、米国、ニュージーランド、シンガポール、チリ、ブルネイ、ペルー、ベトナムの8か国。