◆日本の生協は「存立の岐路に立っている」
総会で承認された11次中計は、この中計期間中(10〜12年度)は、「経済情勢の好転を見通す材料は見当たらず」「消費者のくらしはますます厳しさを増し、堅実な消費行動と購買先の選択が進み」「利便性・サービス・価格競争はかつてないレベルで激化」するという情勢認識を示した。
さらに日本の生協にはこれまでにもいくつかの危機があったが、それは「いくつかの生協の問題」で、「全国・地域での事業連帯や経営構造改革、ガバナンス体制の整備」などによって克服してきた。
しかしいま直面している危機は、個々の生協の危機ではなく「全国の生協が共通に直面している危機」であり、「生協の事業経営・組織の存続に直結するほど深刻なものであることを認識する必要がある」。そういう意味で日本の生協全体が「存立の岐路」に立っていることを「自覚しなければならない」と、日本の生協が重大な岐路にあるとの認識を明確に示した。
◆3つの危機を克服して未来への展望開く
そのうえで11次中計の基調は「組合員のくらしを支える確かな存在であり続けるために、危機意識を持ち、事業経営の構造改革を進め、事業連帯を強める」ことだとした。
そして、その基調を実行する具体的な視点として、(1)生協への信頼再形成、(2)経済・くらし・事業経営の危機への対処、(3)危機を克服して未来への展望を開く、をあげた。
また、09年から検討を開始している「2020年ビジョン」は11次中計とは別に策定することにし、「これまでの事業・活動の歴史を認識・評価し、生協の存在価値にまでおよぶ検討」を行い「10年後のありたい姿」とそれへの「方向性を論議」していくことにしている。そういう意味で11次中計は「2020年ビジョンを策定し、その実現に向けて足元を固める中計」という位置づけになっている。
「ビジョン」策定については、そのための「論点整理・資料集」を作成し、6月26日東京、7月17日名古屋、同24日大阪の3カ所で学習会を開催し、全国論議のキックオフとすることにしている。
◆組合員参加、農業問題などで提言が
11次中計における事業・経営・連帯・組織・社会的な役割といった柱ごとの重点課題については、後日、解説するが、「事業」では、事業共同化が全国的に進む中での「商品事業への組合員参加のあり方」については「CO・OP商品の組合員参加とコミュニケーションのあり方に関する提言」が「あり方検討委員会」の報告書として総会で配布された。
また「産直事業を強め、日本の食料・農業を大切にする活動」を進めるために、生協が取り組むべき15の課題などをまとめた「食料・農業問題と生活協同組合の課題〜食卓と農業をつないで〜」(食料・農業問題検討委員会)も総会で配布された(この文書については、後日、解説する)。
組合員参加問題と農業問題が、今後の事業における重点課題だということだろう。
また宅配(個配)事業ではいままで掲げられてきた「1兆円達成」という数値目標をこの11次中計では掲げていないことも注目される。そしてこの業態での競合激化に勝ち残るために、「宅配事業を革新していく研究」を進めていく。
生協法改正を受けて、いくつかの地域で、県域を超えた合併に向けた検討が開始されているが、「事業連帯の基本的なあり方について論議」を進めていくことにしている。
このほか「2020年に向けた生協の新たな環境政策」(環境基本政策小委員会答申)も配布された。「組合員参加」「農業問題」そしてこの「環境政策」の3つの提言は、今後、全国生協で論議され、それぞれの生協の施策に反映されていくことになるはずである。