今年の国際協同組合デーは、女性の地位向上の国際的指針を示した「北京宣言」から15年となることをふまえて協同組合運動への女性参加と地位向上、男女共同参画などをテーマとした。
日本協同組合連絡協議会(JJC)委員長の茂木守・JA全中会長はJJC会員団体に(社)全国労働金庫協会が加入したことを紹介し「5000万人近い人々が協同組合に関わっていることになる。先が見通せないなか協同組合への期待はますます高まっている。広く一般の人々に正しく理解してもらえるよう連携を」などとあいさつした。
JJC団体からの報告ではコープネット事業連合人事部で男女共同参画などを担当する中井節子さんが、ワーク・ライフ・バランス推進の取り組みを報告した。働き方を考えるための啓蒙活動や子どもの職場参観日、次世代育成支援などの事例を紹介した。
JF全国女性連(全国漁協女性部連絡協議会)からは宇都鈴江会長が「みんなで支え合うJF女性部活動の意義」を報告。「浜の女性の実力」が漁業、漁村づくりに欠かせないとして女性の意識向上のための研修会や、企業グループづくりなどに力を入れているという。また、浜の環境保全活動、水産物の消費拡大運動なども紹介、「次世代に引き継ぐ100人の一歩をめざす」と宇都会長は話した。
今年は哲学者で立教大教授の内山節氏が記念講演した。
(写真)開会のあいさつをする茂木会長。国際協同組合年に向けた取り組み強化も呼びかけた。
◆協同社会の創造を
―内山節氏が記念講演
経済発展が人間を幸せにするか? 多くの人がとまどっている。発展の恩恵は全員には行き渡らず、誰かを下に落とし格差を生む時代になった。とくに都会はお金がなくなると、とことんどうしようもなくなる社会になった。
一方、村の生活はコンビニまで車で1時間以上もかかるし収入も少ないが「隣の家がコンビニだ」とむしろ不思議な豊かさがある。生きていることの充足感を求めて村に移住する人も増えている。都会でも「もともとあった協同をどう思い出すか」が問われてくる。
社会とはさまざまな生命活動がつながり合っているもの。1人で勝手にできない。農業なら自然という生命活動があってこその営み。
それぞれの生命活動を分かち合ってみんなでうまく生きて行く社会が協同社会であり協同組合運動の原点だ。
そのためには仕組みが必要で、お金による交換も本来はその道具だった。ところがそれが強大になってすべてを支配し、生命活動が見えなくなった。トマトもきゅうりも農家の生命活動なのにひたすら商品となり価格しか見なくなった。
言い換えれば、すべてのものは道具であるといい切れる社会が協同社会。道具やシステムに人間が振り回されてはいけない。
協同組合も経済的行為が中心だから何のための協同組合だったかのか、原点を絶えず点検しなければどうしても組織維持に走ることになる。生命活動が見えるかどうかが課題ではないか。
(写真)(左から)内山節氏・JF全国女性連 宇都鈴江会長・コープネット事業連合 中井節子さん