シンポジウムには研究者だけでなく一般の来場者も多く、200人ほどが集まった。
舟山康江農水大臣政務官は「研究成果を今後の活動に積極的に取り入れて頂き、さらなる研究開発の推進に役立ててもらいたい」と、あいさつ。農業生物資源研究所(生物研)の石毛光雄理事長は、「イネのゲノムプロジェクトは、まさに学問の進歩が世の中の役に立つということを示す絶好の機会だ」と、ポスター展示も含めてこの日発表された24件の研究成果を賞賛した。
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あいさつする石毛理事長。会場には200人ほどが集まった。
◆4億の遺伝子からピンポイントで特定・分離
研究発表は5件。「プロジェクトは何をめざしているか」という総括をはじめ、病気に強くておいしい新品種米、カドミウムを吸収し農地を浄化するイネの開発など、さまざまな分野での研究成果について講演があった。
イネゲノムは、日本が主導する形で2004年に完全解読を達成した。生物研は、そのデータベース化や、農業に有用な遺伝子群(QTL)を同定・分離し、多収量、病害虫耐性がある、倒伏しにくい、などの特性をもった新品種開発をするために必要な技術や研究材料の開発・支援を行っている。
効率的な品種開発のためには、約4億塩基対あるイネゲノムの中から、目的に合った遺伝子群を特定し目印を付ける(DNAマーカー)必要があるが、生物研は最新のタイピングアレイやシーケンサーなどの設備を導入しそれを支援している。
例えばDNAマーカーを付けることで、いもち病抵抗性遺伝子pi21と、さらにその隣に味を悪くする遺伝子を効率的に発見できた。pi21を残しつつ、味を悪くする遺伝子を置き換えることで、病気に強くおいしい品種「ともほなみ」を開発したが、「従来の品種改良ではまず実現不可能な品種だ」(福岡修一生物研研究院)と、その成果について述べた。
講演があった研究のほかにも、イネの出穂期を自在に変えるものや大豆や小麦の研究などをまとめたポスターが展示され、研究者と参加者との自由な意見交換が行われた。
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自由な意見交換が行われたポスターセッション
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シンポジウムは今後、8月6日に北海道・美唄市、12月10日に富山市など、地方で開催する予定。地方でのシンポジウムは、より地域の実情にあった研究成果を発表する。