◆中国産稲わら、原因の可能性低い
今回の宮崎県の発生第1例は4月20日の都農町(肉用牛)の農場とされている。
しかし、調査チームの検討ではウイルスの侵入がもっとも早かったのは3月31日に採取した検査材料から陽性と診断された6例目の水牛飼養農場であるとし、さらにウイルスの侵入時期は潜伏期間を考えると3月中旬ごろとした。
また、1例目と7例目(川南町、肥育牛)も抗体検査等の結果から3月下旬にウイルスが侵入し、初発とされた1例目が確認された4月20日時点では「少なくとも10以上の農場にウイルスが侵入していた」と推察した。
分離されたO型のウイルスは今年に入って韓国、香港で確認されたウイルスと遺伝子配列が近いことが判明したことから、アジア地域から人、モノの移動にともなって日本に侵入したと考えられるものの、現時点では侵入経路の特定はできないという。
ただ、6例目と7例目では中国産稲わらは使用されていないことが確認されており、輸入する場合も加熱条件が決められていることから、中国産稲わらルートの可能性は極めて低いと調査チームは判断した。
◆感染拡大は人とモノ
川南町を中心とした地域で感染拡大した要因について調査チームは▽発生農場からの人の動きや共同たい肥施設や倉庫などの共同利用、▽畜産関係車両による伝播、▽広域感染の原因として可能性は低いものの、ネズミ、鳥、ハエ、飛沫核(ウイルスを含む微少粒子)による近隣伝播、と考察した。
とくに畜産関係車両については、えびの市での発生事例(9例目)では川南町の関連農場から牛を積み込んで運搬したことが分かっている。
また、ワクチン接種区域外への感染拡大については▽西都市(283例目)と日向市(284例目)の事例は、児湯地区の発生農場と同じ飼料運搬会社の人・車両が携わっていたことが確認された、▽西都市の発生農場間(283例目と289例目)で同一車両が使用された例が確認された、ことから車両によってウイルスが伝播した可能性があると考察した。
また、宮崎市の3農場の発生(285例目、291例目、292例目)は農場間の距離が数100mのため、飛沫核による伝搬の可能性があるという。
ただし、チーム長の津田知幸・動物衛生研究所企画管理部長によると「都城市への飛び火については要因を特定できなかった」という。
調査チームは今後8月中にも中間とりまとめを行う。そのなかで臨床症状の早期発見と関係機関への早期通報、農場ごとの専用長靴、作業着の着用と消毒の徹底などのほか、都道府県による埋却地の確保など体制構築なども提言する。