集会は「口蹄疫とたたかう畜産生産者を支援しよう!」のスローガンを掲げるとともに、耕畜連携の「日本型畜産」を推進しようと行った。
集会実行委員長の唐笠一雄パルシステム生協専務理事は、「パルシステムでは、日本人はもっとコメを食べようという100万人の食づくり運動をしてきたが、さらに畜産飼料の国産、産直もすすめていきたい」とあいさつした。
JA全農の秋田俊毅常務は、今年度からの全農3カ年計画の最大テーマが国産農畜産物の販売力強化であることを紹介し、「日本型畜産モデルを進化させたい」とし、パルシステム神奈川ゆめコープの齋藤文子理事長(パルシステム連合会新農業委員会委員長)も「畑から食卓、食卓から畑という循環を消費、生産、流通などと一緒につくりたい」と、それぞれ展望を述べた。
◆まるでSF映画 悲惨きわまる口蹄疫の現場
(写真)口蹄疫との闘いを語る大井氏
(株)パル・ミート顧問で獣医の大井宗孝氏は、口蹄疫発生直後から宮崎県に入り約3週間、家畜の殺処分を担当した。緊急報告「口蹄疫との闘い」で、現場の雰囲気や感染した家畜の生々しい映像を紹介すると、生産者・消費者ともに真剣な眼差しで食い入るように聴いた。
大井氏は「まるでSF映画の一場面のようだった」と語った。外を歩く人はみな白い防護服を着て、至る所に消毒用の石灰が撒かれ自衛隊が待機していた。殺処分担当者の中にはPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、一時的に言葉を話せなくった人もいたという。
また、口蹄疫はどういう病気か、なぜ殺処分が必要だったのか、などを疫学上の観点から解説し、「無知や無関心で口蹄疫を風化させないでほしい。数年後、宮崎の口蹄疫があったから今の日本の畜産がある、と誇れるような畜産にしてほしい」と訴えた。
(写真)現場からの報告を息を呑んで聴き入る生産者ら
◆「まずいコメを、手抜きで作ろう!」
基調講演で東農大農学部の信岡誠司准教授は、飼料用米の課題を「つくる人も、利用する人もいるが、物流や保管のコストが高いこと」と指摘し、「飼料用米はコメであってコメでない。生産現場では従来の食用米とは違う、という意識改革をしてほしい」と呼びかけた。
大学のほ場で栽培している超多収米は、10aあたり3t以上の畜糞発酵堆肥を投入し、水深15cm以上の深水で水管理を省略している。乾田直播方式で、タネまきから収穫までの10aあたり労働時間はわずか5時間だという。
「できるだけ手を抜いて、できるだけまずいコメ(高たんぱく)を、できるだけたくさん取る」という、エサ米生産スローガンを掲げている。
(写真)飼料用米生産のポイントを話す信岡准教授
◆飼料米用に100haの耕作放棄地を開墾
集会では全国各地で耕畜連携の取り組みを推進している生産者ら7件が、その取り組みを紹介し、畜産物を振舞った。
岩手県のまでっこのこめ鶏協議会は、十文字チキンカンパニー、JA新いわてなど7団体が参加し飼料用米を作付けしている。2010年は6.6haの作付けで36tを収穫し、13万羽のこめ鶏を飼育する予定。
飼料米を使うと1パック18円ほど値段があがってしまうが、協議会の小山元太郎さんは「こめ鶏は味が格段によくなるわけではないが、社会運動だと思ってやっている。一番の収穫は地元の農家同士の交流が盛んになったこと」だという。
秋田県からはこめ豚を生産するポークランドとJAかづのらが、100ha以上の耕作放棄地を開墾し飼料用米をつくる取り組みを紹介した。
飼料用米は秋田県内の5JAが協力し、JAあきた北央のカントリーエレベーターに集めている。ポークランドでは、パルシステムから出る規格外のパンを飼料として与える「パン豚」の育成にも取り組んでいる。
集会の最後には、パルシステムから「耕畜連携を推進しよう」という行動提起と、「生産者と消費者が手を組んで難局を乗り切ろう」という決意表明があった。
(写真)耕畜連携の取り組みを紹介する産地代表ら