嶋田 一義 氏
JA福岡中央会会長
「私は74歳で終戦の時、小学校3年生で防空頭巾を被って登校していました。行橋の百姓の子どもでしたから米と梅干と味噌があれば食事ができましたが、近所には非農家の方が多く、戦中・戦後の食糧難の時代にこの人たちが“飯が食べれない”姿をみてきました。人間、飯が食えないほど惨めで可哀そうなことはないということを肌で感じました」
「だから私は、食料安全保障について非常に強い拘りをもっていますし、このことを政府にきちんと拘ってもらわねばならないと思います」
「政治の一番大事なことは“国民に安心して飯を食べさせること”だと思います。もちろん、防衛も社会保障も大事だけれども、“飯を安心して食べさせる”ことは、大きな意味で社会保障にも繋がるものと思いますね」
インタビューの冒頭、嶋田会長はご自身の体験を含めて食料安保への熱い思いをこのように語ってくれた。
◆組合員の所得向上と販売力の強化をめざし
さらに、世界の人口が増加し世界的に食料不足になることが分かっているのだから、食料自給率向上をはじめ食農教育や米の消費拡大をすすめるのは単に農家のためではなく消費者のためであり「国家戦略として国がやるべき仕事」だとも。
福岡県のJAグループは今年度からの「中期計画」に取り組んでいるが、その最大の課題は「組合員の所得向上と販売力強化」だ。
そのための施策の一つがJA直売所を充実させていくことであり、現在、県内19JAに46カ所の直売所があり年間100億円売り上げている。
「地域に貢献するのは産業組合時代からの日本の協同組合の伝統だから、直売所が果たす役割はぴったり合っている」。
また、農業所得の向上のため県産農産物の輸出を目的に、福岡農産物通商をつくった。
併せて、地域の人にもJA事業の「利便に供してもらい」いずれは准組合員になり協同活動にも参加してもらうための「JAファンづくり」を進めている。
少子高齢化のなかで農業後継者をいかに育てるか、さらに「水田農業を守っていくのは集落営農だから、これをどう育てるか」も課題であり、そのため県中央会では今年4月に「農業経営管理支援室」を設置した。
◆地域に貢献するJA直売所の充実
農産物価格が低迷しても生産費はそれほど下がらないなかで、所得を増やすためにいかに経営効率化を進め、経費を節減するかという管理面での分析・指導をしていくことにしている。
そのほか会長にかかる期待は大変なものがあると思うが、もっとも好きな言葉であり、座右の銘である仕事にも組合員にも「誠実で謙虚」に取り組んでいくのが現在の嶋田会長の心境だという。
【Profile】しまだ・かずよし
昭和11年5月生まれ。昭和34年宮崎大学農学部卒、行橋市農協入組、平成9年同組合長、10年合併によりJA福岡みやこ初代組合長、22年JA福岡中央会会長、JA共済連福岡運営委員会会長。