高橋 一夫 氏
JA栃木中央会会長
栃木県の農業は、米麦・園芸・畜産がバランスよく各3分の1ずつを占めているが、最近は米が減り園芸が伸びている。しかし、就農者の高齢化が進んでいることや農産物価格が低迷していることから、担い手が育っていないということが大きな課題となっている。とくに「中山間地の場合、担い手で地域をしっかり守ることが難しくなってきている」ので、将来的には「JAが核にならざるをえない地域もでてくる」のではないかとみている。
厳しい環境下で農家組合員の手取りを増やすためには販売力を強化することだと、県内JAグループも取り組んでいるが、「しっかりした実のあるものにし、担い手もやりがいをもてる所得にしていかなければならない」。そのためには、農業者と消費者の「相互理解」が大事だと考えている。
◆消費者との相互理解で生産者の意欲を
「いまの時代はあまりにも豊かになり過ぎ、食の大切さを忘れてきている」。「食べること、食べられることの大切さ」を伝えることが必要だという。
栃木県は大消費地に近いという地理的な条件を活かして「消費者にできるだけ農業の現場を知ってもらうため、生協などとの農業体験交流の場をつくってきている」。さらに「JAの准組合員に農業の理解をしてもらう」ことで相互理解を深めたいと考えている。
また、いまの子どもたちは、農業や自然に触れる機会が少なくなってきているので、小学生にそういう場を提供し農業を体験し理解してもらうことにも取り組みたいという
「生産者には作る喜びが」あり「不作より豊作の方が嬉しい」。そうしたことを消費者が理解してくれ「おいしい」といわれれば「生産者のつくる意欲が出る」ので、さまざまな形で相互理解を深めることだと強調する。
◆政権交替しても基本は不変な農業政策を
農業や農村が抱える問題を解決するには国の施策も必要だ。
まず「減退している消費者の購買力を回復するような施策」をと要望。
そして、政権党が交替して国の農業政策が変わるのは「農家を不安にする。政権が変わっても農業政策の基本の部分は変わらない、国としての一貫性をもって欲しい」。
中山間地については「農業と林業を合わせた」施策が必要であり、最近は「鳥獣害被害が拡大して、全県下で大きな問題となっている」。そのことを含めて、農業や森林の「多面的機能に見合った国の政策が必要」だと考えている。
座右の銘は「初心忘れるべからず」。その心は「農業に対する思いを大事にし努力する。努力なくして初心を貫徹することはできない」ということ。
【Profile】たかはし・かずお
昭和16年栃木県生まれ。35年栃木県立佐野高等学校卒。平成17年5月安佐農業協同組合代表理事組合長、同年6月栃木県農業協同組合中央会理事、18年佐野農業協同組合代表理事組合長(名称変更)、20年6月佐野農業協同組合理事長、栃木県農業協同組合中央会副会長、22年栃木県農業協同組合中央会会長。
※「高」は正式には旧字体です。