庄條 徳一 氏
JA福島中央会会長
福島県のGNPは全産業あわせて9兆円だが、そのうち農業は2400億円ほど。かつて4000億円ほどあった農業生産額は年々目減りし、それに伴う後継者不足、組合員減少にどうやって歯止めをかけるかが大きな問題だ。県内17JAの間にも格差が生じてきているので、昨年11月の第37回JA福島大会で次世代JAのあるべき姿を検討すべく決議し、現在調査段階に入っている。やはりJAがある程度余裕のあるうちに、立ち止まって再検討することが必要だろう。
◆感謝の気持ちが事業につながる
最も力を入れたいことは人材教育だ。
役職員ともに、自分達は組合運動の一員なんだということを、充分理解することが組合員メリットにつながると思う。例えば若い職員の中には、「なんで俺は事務屋で入ったのに共済の推進なんかやらなきゃいけないんだ」と不満を言う人もいるが、それが総合農協なんだということを理解するためにも、自分の仕事の原点を知らないといけない。
運動員としての自覚を持てば、組合員との強い絆ができるし、それが信用、共済、営農などすべての事業につながっていく。感謝の気持ちを持てば、自ずと数字は後からついてくるものだ。職員教育、人材育成をしっかりやって5年後10年後にそういう人たちが今のJA事業を継いでくれれば、それが組織の永続性や存在意義にもつながるんだと思う。
協同組合は相互扶助の精神で成り立っている組織だから一般企業とは違うんだという意識を、いかに役職員ともに持ってもらうかが大事だ。
人は石垣、人は城というけど、やはり重要なのは人。人が離合集散していては、組織として最大限の力は発揮できないし、そんなことでは農協運動が軽視されてしまう。
去年、農林中金が大きな損失を出したが、たった3カ月で全国から1兆9000億円が集まったし、口蹄疫の募金だって目標1億円だったのが4億5000万円も集まった。こういうのを見ると、相互扶助の精神、農協の結集力はまだまだ捨てたもんじゃないな、と思う。
◆何事も一生懸命
「一生懸命生きっべ!」というのが役職員へのメッセージだ。
私は高校野球の大ファンだが、彼らは暑くても雪が降っても、ロマンを求めて夢に向かっているから、例えば東京の強豪校と山の中の高校が試合したら、負けるのはわかってるんだけど、負けたらやっぱり泣いてしまう。なぜならそれは一生懸命やったから。自分の努力に報いる涙なんだ。だから例え思ったような結果が出なかったとしても、物事にチャレンジする姿勢、努力する姿が組合運動者の一人として組織の維持発展につながるんだ、ということを伝えていきたい。
【Profile】しょうじょう・とくいち
昭和18年2月27日生まれ。36年就農。59年会津地方農青連委員長、平成3年北会津村議会議員(二期)、11年北会津村長(二期)、17年会津若松市特別参与、18年JAあいづ代表理事組合長、20年JA福島県五連副会長。
※「徳」は正式には旧字体です。