対談 (前編)
東京大学名誉教授・神野直彦氏
愛媛大学社会連携推進機構教授・村田 武氏
格差拡大の中での
「成長」には意味がない
◆「地方の反乱」逆転
村田 神野先生は、菅直人首相が掲げている「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」という言葉の生みの親ですが、今度の参院選の結果をどう見ますか。
神野 自民党の勝利なのかも知れませんが、いずれの政党も勝利しなかったともいえます。しかも、比例区では民主党は第一党の支持をえています。
争点は消費税や税制改革であるといわれましたが、それよりも、1人区の問題を見ると、地方で民主党に逆風が吹いたことが大きかったと考えたほうがいいんじゃないかと思います。
昨年の衆院選では、地方を基盤とした自民党が近年は都市に基盤を移そうとしたため“地方の反乱”が起きて自民党が負けたとされました。地方は民主党に地方経済の建て直しなどを求めたわけですが、それが期待はずれだったとして今回は逆風が吹きました。
自民党は都会型の重視で失った地位を今回取り戻したとも考えられます。
村田 民主党の小沢一郎さんが今回かき集めた候補は衆院選の時と比べて力不足だと思いました。私は愛媛の選挙区ですが、自民党は地方議員として、しっかりとその基盤に密着した人を立てて当選しています。
また公共投資の削減とか農業者への戸別所得補償や子ども手当などについても次はどうなるかの確信ある見通しを民主党は地方に与えきれていませんでした。
神野 国際的には日本人はスキャンダル・マニアといわれます。スキャンダルで支持率の落ちていく唯一の国だからです。日本人は細かいことには真剣に議論するけれども、本質的なことはあざけり、真面目に議論しようとはしません。
そのため日本の社会の中で「助け合って生きていく」ということが理解されなくなっているのではないかと思います。
フランスは社会保障給付がスウェーデンを抜いて世界で一番手厚い国になりましたが、日仏交流の会議やシンポジウムなどでの話を聞きますと、日仏の議論はかみ合わないのです。
日本側は少子高齢化が進むと社会保障が増大して大変だと訴えますが、フランス側は「少子化対策などやったことがない。家族政策を実施しているだけ」などといいます。
また経営者代表は「働くことと、家族生活の両方を大事にする労務管理をしないと優秀な人材が集まらない」とも説明します・・・。
(続きはシリーズ 第8回 「『助け合い』『連帯』を見詰め直して」で)
(第1回 「協同組合セクターの連携強化を」加藤好一・生活クラブ生協連会長)
(第2回 「協同組合への理解を広める」冨士重夫(JA全中専務)・田代洋一(大妻女子大学教授)対談)
(第3回 「『浜』がJF―漁協―の原点」JF全漁連専務理事・山本忠夫氏)
(第4回 「独禁法適用除外の解除論―『国連宣言』と逆行」加藤一郎・JA全農専務理事)
(第5回 「組合員は組織の先端―『農協は今、組合員から力を吸い上げているのか』石田正人・長野県飯山市市長(元JA北信州みゆき組合長))
(第6回 「いまJAが果たす役割は」廣瀬竹造(前JA全中副会長)・土屋博(JA全中常務理事)対談)
(第7回 「社会の危機救う「他者への思い」―世界の食料問題と国際協同組合年―生源寺眞一・生協総合研究所理事長)