集荷円滑化対策、発動基準の地域も
◆天候回復で生育進む
4月、5月の低温と日照不足による田植え作業の遅れや、初期成育の抑制は全国的に指摘された。そのため茎数が少ないという傾向も共通するようだ。
その後、6月、7月からの天候回復で急速に生育が進んだという地域が多い。
ただ、四国ではこの時期に曇天で日照不足が指摘された。また、九州の一部では長雨による影響も報告されている。
北海道も6月から生育が急速に回復したというが、いもち病が発生しているとの報告が聞かれた。ただ、適切な防除により被害は一部のほ場にとどまっているという。関東では急速な生育で草丈が長く倒伏を心配する声もあった。
◆高温障害が心配
作況指数が104、105と推計された青森、岩手からは茎数は少ないものの、「好天によって一穂あたりの穂数、穂長が良い」ことなどが豊作の要因との指摘があった。しかし、8月の高温、とくに夜温が高く品質への影響が心配されている。
8月の猛暑続きによる高温障害の懸念は各地で聞かれた。「出穂期からの猛暑続きで害虫の発生が多い」、「生育はいいが品質があまりよくないのではと心配」といった声が聞かれた。その他の地域でも、カメ虫類の発生による着色粒のほか、乳白粒や胴割の懸念も多くのJAから指摘された。
◆集円対策あれば発動基準
本紙推計の全国作況「101」とは、従来の豊作による過剰米を区分出荷する対策「集荷円滑化対策」の発動基準のひとつを満たすものだ。発動条件は「全国」に加えて「県」と「地域」で「101」以上だった。推計結果からは地域によってはこの発動条件を満たすところはあると考えられる。
しかし、戸別所得補償モデル対策の導入で、政府はこの対策を実施しないとしている。豊作による過剰についても対策を打たないのか、これも今後の大きな焦点となる。
◆異常気象年の米づくり
気象庁は酷暑が続いた今年の天候を「30年に一度の異常気象」とした。夏の平均気温(6〜8月)は統計を開始した1898年(明治31年)以降、113年間でいちばん高い記録となった。
春先は不作懸念、その後、一転して生育は急速に回復したが、ここにきて高温障害が懸念されている。この異常気象のなかで、米づくりの現場では懸命の管理が続いた。
「最近、農産物は天候に左右されるという観念が薄れているんじゃないか。工業製品と同じではない」とのJA担当者の指摘が改めて胸を衝く。