21年産米は、▽政府の需要見通しを上回る米消費の減少、▽20年産米が大量持ち越されたことによる契約・販売進度の遅れなどから、昨年の出来秋から60kgあたり1000円近く下落した。
また、JA全農によると未契約米が25万トン、契約済みでも11月以降の引き取りとなる
米が約10万トンとあると見込んでおり、合計35万トンがこれから出荷・販売が本格化する22年産米と競合することになる。
一方で22年産米は昨年より少なくなったとはいえ過剰作付けは依然4万haあることや、豊作基調で推移していることなどから20〜40万トンの過剰米の発生が懸念されている。
こうしたことから米の消費減と21年産米の持ち越し在庫などと合わると、「60万〜80万トン」もの需給ギャップが生じかねない状況にある。
JA全中はこの状況を放置すれば▽全国的な価格下落と数年にわたる低米価定着への危惧、▽在庫を抱える産地・生産者の所得減少、▽国の財政負担増、▽全国的な生産数量目標の削減といった問題を引き起こし、国の需給調整と米戸別所得補償制度に参加した生産者ほど「営農の不安や制度への不信を抱きかねない」と強く訴えている。
とくに戸別所得補償制度は価格下落に備えた変動部分の支払いがあるとはいえ、米が販売されることが前提であって「在庫を抱え飼料用処理などを余儀なくされた産地にとってその負担は想像を絶するものになる」(JA全中)としている。さらに23年産の生産数量目標の全国的な削減にもなりかねず、全稲作生産者にとって大きな困難を抱えることになる。
このため危機的な状況を改善し、稲作生産者が安心して経営を展望できるよう「政府は緊急的な需給調整対策を早急に実施すべき」として4点を政策提案した。
(1)戸別所得補償制度の本格実施にあたっては22年産米の適正は需給・価格環境を整備し米価が大幅に下落する事態を招かないようにすること。
(2)需給状況を改善するため現下の過剰米を主食用市場から隔離することを柱とする政府による緊急的な需給調整対策を早期に決定し、市場へアナウンスすること。
(3)政府棚上げ備置(主食用米の買入および非主食用処理)は現下の需給ギャップ数量をふまえ22年産米から前倒しし早期に実施すること。
(4)水田を最大限活用しわが国の主食である米の安定供給と飼料用米等の振興により食料増産と自給率向上をはかるため、主食用米については需要に即した計画生産が必要であり、政府が定める生産数量目標を適切に管理するための出口対策を含め整合性のとれた政策体系を確立すること。
これらの政策提案のほか理事会では政府による緊急的な需給調整対策が実行されることを前提に平成16年、17年に生産者が拠出した集荷円滑化対策の過剰米対策基金(321億円)を活用した自らの需給改善策にも取り組むことも決めた。
今後、政府・政党への働きかけを強め政策実現をめざす。