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TPP参加で日本農業は崩壊する コメの需給状況の改善など訴え全国集会  JAグループ

 歯止めが効かない米価の下落、急浮上したTPP(環太平洋連携協定)交渉への参加検討など、現在の農政問題について、生産現場の要望を主要政党に訴えようとJA全中は10月19日、東京・永田町の砂防会館で「米の需給・価格安定と万全な所得補償を求める全国代表者集会」を開いた。生産者やJA代表者など、1000人が集まった。

1000人以上が集まった。あいさつする茂木会長。

(会場)
1000人以上が集まった。あいさつする茂木会長。

 主催者あいさつでJA全中の茂木守会長は、「実りの秋を迎え、本来ならわれわれ生産者は喜びを分かち合う季節だが、米価は下落し続け先行きが見えない」と現状への不安を述べるとともに、米価が下がっても戸別所得補償モデル事業による補てんがある、過剰米対策はしない、という政府の対応と現状認識に対して「現場の混乱と怒りが強まっている」と述べた。
 また、菅直人首相がさきの所信表明演説でTPP(環太平洋連携パートナーシップ)への参加を検討しているとした発言を受けて、「(TPP参加となれば)日本農業が崩壊するのは必至だ」と強調し、「(TPP参加は)食料自給率の向上や食料安全保障を掲げて今春策定された『新たな食料・農業・農村基本計画』の理念と合致しない」と反論した。


◆「もっと血の通った農政を」

 主要政党からの出席者は、▽民主党・佐々木隆博農林水産部門会議座長、▽国民新党・下地幹朗幹事長、▽自民党・宮腰光寛農林部会長、▽公明党・石田祝稔政務調査会副会長、▽共産党・紙智子農林・漁民局長、▽社民党・吉泉秀男農林水産部会長、▽みんなの党・川田龍平政策調査会長代理、の7人。
 民主党の佐々木氏はコメ政策について「21年産の在庫と、22年産の米価下落は別々の問題であり、1つの制度で2つの問題をクリアするのは難しい」とし、「頑張っている農家が報われる農政にしたい」と述べた。
 TPPについては各政党とも反対、または慎重な議論を要するという姿勢を示した。
 各政党出席者からのあいさつでは、農政と直接の関係がない政策提言などに対して会場から厳しい意見が出されたほか、与党である民主党と国民新党の代表者が閉会前に退席しようとした際には不満の声が多くあがった。
 会場からは、JA栗っこ(宮城県)の菅原章夫代表理事組合長、JAえちご上越(新潟県)の服部武経営管理委員会会長、JA全青協の牟田天平副会長の3人が意見表明した。
 政府のコメ政策については「裏切られた気持ちだ」「血の通った農政をしてほしい」などと苦言を呈し、TPPについては「どんな国益があるのか、まったく議論されていない」との意見が出た。
 集会では、「米の需給・価格安定と万全な所得補償の実現に関する集会宣言」と「政府のEPA基本方針策定にあたっての特別決議」を満場一致で可決した。


【集会宣言】(概要)
 現在のコメの需給状況を放置すれば、さらなる米価下落、23年産米の大幅減産などにより全国の生産現場は大混乱に陥りかねない。
 国は需給状況の改善、棚上げ備蓄の前倒しなの緊急対策を講じ、転作の取り組み拡大に対する充分な予算確保や、地域・品目ごとのセーフティネットの確立など生産現場の実態を踏まえた制度の改善・見直しを行うべきだ。
 JAグループは、コメの需給・価格安定と万全な所得補償の実現に向けて組織の総力をあげて運動を展開することを宣言する。


【特別決議】(概要)
 政府は11月のAPEC首脳会議までにEPA基本方針を策定するが、その中で米国、豪州など9カ国が行うTPP交渉への参加を検討している。TPPは関税撤廃の例外措置を認めない完全な貿易自由化をめざした交渉であり、TPPを締結すれば日本農業は崩壊する。
 日本がTPP交渉に参加しても、交渉参加国の相互発展と繁栄という、交渉本来の目的は達成できない。日本の食料安全保障と両立できないTPP交渉への参加は断じて認めることができない。

(2010.10.19)