◆国民理解が不十分なまま交渉をすすめてよいのか?
集会には当初予定の3000人を大幅に上回る4000人超が集結。会場後方の立見席もぎっしりと埋まり、大変な熱気に包まれた。
主催者代表あいさつでJA全中の茂木守会長は、9日に政府が閣僚決定した「包括的経済連携に関する基本方針」の中でTPP交渉への参加・不参加の決定を先送りにしたものの「関係国との協議を開始する」と判断したことに強い遺憾の意を表すとともに、「(基本方針の中で)日本の農業分野について、国を開くことが目標になっているが、すでに充分開かれている。これ以上を求められるいわれはない」と反論。TPP交渉参加による、資本・金融・労働力の自由化、関連産業や地域経済全体への影響などについても、「国民が充分に理解する時間もないまま、交渉を進めるのは認められない」として、全国民を巻き込んで反対運動を展開する決意を述べた。
◆TPP参加は国際的な背信行為
情勢報告を行ったのはJA全中の冨士重夫専務。日本がこれまで貿易立国として関税を低く設定して経済的発展を遂げた一方、食料自給率が40%にまで低下してしまった現状などを挙げ、さらなる関税撤廃に反対するとともに、TPP交渉への参加は食料の貿易自由化に対してこれまでともに戦ってきたノルウェー、スイス、フランス、イタリアなどを裏切る重大な国際的背信行為だと指摘した。
団体代表として、▽全漁連・服部郁久代表理事会長、▽北海道議会・中司哲雄農政委員長、▽鹿児島県商工会連合会・森義久会長、▽みやぎ生協・齋藤昭子理事長の4人が決意表明。それぞれの地元で農林水産業と地域経済が密接につながっていることや現政権への失望感などを交えて、改めてTPP参加への強い反対を表明した。
代表政党別では、▽郡司彰氏(民主党、前農林水産副大臣)、▽亀井静香氏(国民新党代表)、▽大島理森(自民党副総裁)、▽石田祝稔(公明党政務調査会副会長)、▽志位和夫(共産党中央委員会幹部会委員長)、▽福島瑞穂(社民党党首)、の6人があいさつ。各人がTPP参加断固反対を表明し反対運動を応援する度に会場から拍手と歓声が沸いたが、郡司氏の登壇には厳しい声が飛んだ。
集会では「TPP交渉に参加すれば、WTO農業交渉における多様な農業の共存という高い理念と、その取り組みは一瞬で水泡に帰す」「地球環境を破壊し、目先の経済的利益を追求し、格差を拡げ、世界中から食料を買い漁ってきたこれまでの日本のあり方を反省すべき」などを盛り込んだ「TPP交渉参加断固阻止に関する特別決議」(全文別掲)を採択し、国会に向けてデモ行進を行った。
★TPP交渉への参加に反対し日本の食を守る緊急全国集会実行委員会
【構成団体】
▽JA全中
▽全国農業会議所
▽全漁連
▽全森連
▽JA全農
▽JA全共連
▽農林中央金庫
▽(株)日本農業新聞
▽(社)家の光協会
▽全厚連
▽(株)農協観光
▽生活クラブ事業連合生活協同組合連合会
▽大地を守る会
▽(社)大日本水産会
【賛同団体】
▽全国町村会
▽パルシステム生活協同組合連合会
▽(社)中央酪農会議
「TPP交渉参加断固阻止に関する特別決議」
咋日、政府は「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定した。このなかでTPPについて交渉の参加・不参加を先送りにしたものの、「関係国との協議を開始する」と判断したことは、きわめて遺憾である。我々は、改めて、TPP交渉への参加には反対であり、絶対に認めることはできない。
仮に今後、政府がすべての品目を自由化交渉対象とし、TPP交渉に参加する判断を行えば、WTO農業交渉における、「多様な農業の共存」という高い理念の実現に向けた取り組みは一瞬にして水泡に帰し、多くの国々や関係者の信頼を裏切る背信行為となる。
基本方針では、わが国農業分野について「国を開く」ことを目標に掲げているが、農業分野はすでに十分に開かれている。わが国は世界最大の農林水産物純輸入国であり、国民の圧倒的多数が望むのは食料自給率の向上である。
わが国1億2千万人の国民の食料安全保障を担保し、安全・安心な食料の安定供給と併せ、農林水産業が果たしている地域経済、社
会、雇用の安定を確保することが、わが国の「強い経済」を実現することにつながり、「未来を拓く」ことになる。
わが国は、今、たしかに「歴史の分水嶺」に立っている。地球環境を破壊し、目先の経済的利益を追求し、格差を拡大し、世界中から食料を買いあさってきたこれまでのこの国の生き方を反省しなければならない。
自然の恵みに感謝し、食べ物を大切にし、美しい農山漁村を守り、人々が支え合い、心豊かに暮らし続け、日本人として品格ある国家を作っていくため、我々はTPP交渉への参加に断固反対し、更なる国民各層の理解と支持を得ながら、大きな国民運動に展開させていく決意である。
平成22年11月10日
TPP交渉への参加に反対し日本の食を守る緊急全国集会
(写真)「ガンバロー三唱」で反対運動への連帯感を強めた