農政・農協ニュース

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【貿易交渉のこれまでを振り返る】 「多様な農業の共存」こそニッポン再生の要

 JAグループ、JF、生協連らは11月10日、日比谷公園でTPP(環太平洋連携協定)参加に反対する緊急全国集会を開いた。集会の模様は11月15日付の本紙記事で配信済だが、過去のWTOを含めた貿易交渉では何が問題になり、何が決議されたのか。当時の写真とともに概要を再録する。

◆国民総意の「日本提案」はどこに?

WTO緊急全国集会(06年4月) 世界の貿易を拡大させる目的で1995年にGATT(ガット、関税貿易一般協定)を引き継いで設立されたWTO(世界貿易機関)。
 2001年にカタールのドーハ閣僚会議で立ち上がったWTOドーハ・ラウンドは農業、鉱工業、サービスのほか、ダンピングなどに関するルールや知的財産権なども対象に包括的な貿易交渉として行われてきた。また、貿易を通じた途上国開発も最重要課題となっている。
 日本はこの交渉に臨むにあたって「多様な農業の共存」を基本哲学とする日本提案を世界に向けて発信した(2000年12月)。
 ここでは農産物貿易のルールを決めるにあたっては▽農業の多面的機能への配慮、▽食料安全保障の確保が必要と主張しているほか、輸出国と輸入国のバランス、途上国への配慮も追求すべきだとした。
重要品目除外を求めた日豪EPA対策集会(06年12月) 前文では、これは「我が国国民の総意に基づく」ものとし、さらに日本国民は「21世紀が様々な国家、地域がそれぞれの歴史、文化等を背景にした価値観を互いに認め合い、平和と尊厳に満ちた国際社会において共存すべき時代でなければならないと確信する」と主張したのである。
 生産条件を克服する必要性を互いに認めることや、各国の農業が「破壊されることなく」共存していけるルール実現も訴えた。「国のかたち」が問われる今回のTPP問題を考えるうえで、これは立ち返るべき原点ではないか。


◆各国の食料増産も宣言 APEC

多様な農業の共存を求めるWTO対策集会(08年12月) その後のWTO交渉では、関税削減を緩やかにする「重要品目」と一般品目とに分けて扱う枠組み合意がなされたが、重要品目の数やその扱いについて厳しい対立が続いてきた。JAグループはこの間、世界各国の農業団体と連携しそれぞれの農業が持続できる交渉を求め主張を展開してきた。
 一方、日本は2国間協定であるEPA・FTAも推進してきたが、まさに多様な農業の共存が実現されならないことが強調されてきた。2006年に交渉開始が合意された日豪EPA交渉に際しては重要品目を除外することなどが衆参農林水産委で決議されている。また、昨年夏には民主党マニフェストに日米FTAの推進が明記されたため、JAグループは消費者団体などとも連携し断固反対を表明している。
昨年夏は、日米FTAも急浮上した。日米FTA断固阻止(09年8月) そして今回、TPPである。しかし、この3月には10年後の食料自給率50%を目標にした新たな基本計画を「国家戦略」として位置づけることを政府は決めている。また、横浜のAPECではTPPばかりが焦点になったが、10月に新潟で開催されたAPEC食料安保担当大臣会合では、域内各国の食料増産、農業の発展の必要性を宣言に盛り込んでいる。経済成長ばかりに関心が集まるが食料がなければ人間の経済活動はありえない。食料安保に関する閣僚宣言も今回のAPECの成果である。
 TPP参加に反対するJAグループには、これから幅広い国民運動を展開することが求められる。JAグループが作成したパンフレットには「命の安全保障を放棄してまで追求しなければならない経済成長とは一体何なのでしょうか?」と訴えている。


(関連記事 大国民運動の展開を―TPP参加は断固反対

(写真上から)
WTO緊急全国集会(06年4月)
重要品目除外を求めた日豪EPA対策集会(06年12月)
多様な農業の共存を求めるWTO対策集会(08年12月)
昨年夏は、日米FTAも急浮上した。日米FTA断固阻止(09年8月)

(2010.11.22)