性フェロモン剤とも呼ばれる交信かく乱剤を用いるのがポイントだ。害虫の雌雄は互いの居場所などを知るために匂い物質の性フェロモンを使う。その成分を人工合成して、少しずつ揮発する特殊な資材に収めたものを交信かく乱剤という。環境にやさしい資材だ。
これをリンゴ園に設置すると性フェロモン成分が園地に充満して害虫の雌雄は出会うことができなくなり、次世代は生まれない。
リンゴ栽培は多種多様な病害虫を防除するため数多くの農薬を散布するが、生態系への影響低減や、作業者の健康への配慮などから農薬使用量の削減が求められていた。
そこで同センターは農研機構果樹研究所、岩手県農業研究センターと共同で「農薬50%削減リンゴ栽培技術体系」を開発した。
交信かく乱剤などを使うこの防除技術を実施した場合、岩手県の防除基準に定められた43成分回数(「ふじ」の場合)と比較して、その半分以下となる21成分回数の農薬で、主要な病害虫を慣行栽培と同程度に防除できる。 研究の成果としては「岩手県における農薬50%削減リンゴ栽培マニュアル」が作成されている。
岩手県盛岡地方での実証試験に基づく防除方法を他の産地にそのまま適用しても効果が得られない可能性があるが、発生予察の技術はリンゴ産地に共通して活用できる。マニュアルに記された調査技術が各地域で実践されて農薬削減が進むことが期待されるという。
成分回数とは1つの農薬に含まれる有効成分数に散布回数を掛けた数値。