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「農政を国政の真ん中に」鹿野農相  食料・農業・農村政策審議会が茂木会長ら委員2人を追加

 農水省は12月17日、今年8月に選任された委員らに、新たに茂木守JA全中会長と阿南久全国消費団体連絡会事務局長の2人を加えて第24回食料・農業・農村政策審議会と第25回企画部会を開いた。企画部会は中嶋康博東大准教授を部会長に互選した。

活発な意見交換をとあいさつする鹿野農水相 鹿野道彦農水相は審議会冒頭で、「新自由主義の流れの中で、第一次産業は隅っこに追いやられている」と現状認識を述べ、「水と食料は21世紀のキーワードだ。国政の真ん中に農政を持っていけるよう、審議会での意見を具体的に政策につなげていかなければいけない」と、参加者の活発な意見交換に期待を寄せた。
 今回、新たに2人の委員を追加したのは、TPPや内閣改造など夏以降の農業をとりまく情勢の変化をうけて、「より幅広い業界からの意見を聞く必要があると判断した」(農水省政策課)ため。

(写真)活発な意見交換をとあいさつする鹿野農水相


◆わずか6カ月で前提が変わった基本計画

 審議会は、11月9日に閣議決定された「包括的経済連携に関する基本方針」を受けて同26日に設置された食と農林漁業の再生推進本部の方向性やTPP問題などについて意見交換を行った。
委員に加わった茂木守JA全中会長 茂木会長は「(今年3月の新基本計画で決まった)食料自給率50%実現に向けていま何をするべきか、農業でメシが食えない状況をどう変えていくかが課題だ」と述べ、今後の目標設定が大事だと強調。また、自身が所属するJA佐久浅間を例にとり、「何年も前から農畜産物の加工品開発やカット野菜など、いわゆる6次産業化を進めているが劇的に農業者の所得を向上させるのは難しい」と現場の窮状を伝えた。
 再生推進本部は来年6月までに基本方針、10月をめどに行動計画を策定する予定だが、それについてNHK解説委員の合瀬宏毅氏は「3月の基本計画では『農業に影響を与えない形でEPAを推進する』となっていたのが、11月の基本方針では『高いレベルの経済連携』が前提になっている。たった半年で国の方向性、農政の前提が変わってしまったのか? まずは今後の議論の方針を明確にするべきだ」と指摘。NPO法人田舎のヒロインわくわくネットワーク代表の山崎洋子氏も「国を開く、高いレベル、などの言葉では中身が見えない。どうやって農業を守るのか、具体的方策を示すべきだ」と提言した。

(写真)委員に加わった茂木守JA全中会長(左から4人目)


◆農業の改革は国民的議論で

 これからの農業のあり方については、「いまのような生産者vs消費者、農業vs他産業のような対立の構図はよくない。農業の悪いイメージだけが残ってしまう」(廣野正則・広野牧場代表取締役)、「農業をものづくりの視点で考えて、開発・生産・物流などさまざまな意見を交えて、オールジャパンで農業の今後の道筋を考えたい」(渡辺捷昭・トヨタ代表取締役副会長)など、国民的議論の必要性を望む意見が多く出た。
 消費者からは「TPPに参加すれば食べ物が安くなっていいじゃないか、という程度の考えしか持っていない人が多い。もっと広報してほしい」(近崎奈保子・主婦)、「生産現場のがんばりや、国産農産物の品質、安全性をもっと見えるようにして、消費者側から農業を支えたい」(阿南久)などの意見があった。
 そのほか、JAグループに対して「信用・共済事業よりももっと生産性を高めることに注力すべきだ」(新波剛史・ローソン代表取締役社長CEO)との意見や、「貿易自由化で農業に競争力を、というが、海外のどこにどれほどのマーケットがあるかなどの情報をもっと生産者に出すべきではないか」(佐藤洋平・農業環境技術研究所理事長)など政府の情報分析・公開の強化を求める意見があった。

(2010.12.20)