農政・農協ニュース

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23年度農林水産予算、2兆2712億円―概算決定

 政府が2010年12月に決定した23年度予算で農林水産関係は前年比92.6%の2兆2712億円となった。地方への一括交付金として農林水産予算から拠出した1090億円を含めると総額は2兆3802億円となるが、それでも前年比2.9%減となった。
 農業者戸別所得補償制度には畑作物の所得補償交付金を含め8003億円が計上された。新たな仕組みを中心にポイントを解説する。

◆60kg1万3700円を補償―主食用米

 戸別所得補償制度には8003億円を計上している。
 このうち主食用米の生産については、生産数量目標に従って生産(=計画生産に参加)した場合にコスト割れ相当部分を補てんする10aあたり1.5万円を支払う「米の所得補償交付金」と、米価下落分を補う「米価変動補てん交付金」で支援する。
 予算案決定にあたって農林水産省は、政府が補償する米の「標準的な生産費」(経営費10割+家族労働費8割)を60kg1万3700円と改めて明記した。これはモデル対策で用いた14年産〜20年産の生産費からの算定と同じ。
 このうち恒常的なコストを割れ相当分として今年度のモデル対策から全国一律に支払われている10aあたり1.5万円の固定部分は、60kgあたりすると約1700円に換算される。23年度予算では生産数量目標が18万t減となったことから交付対象面積を130万haと見込み、この部分の予算額は今年度モデル対策より51億円少ない1929億円とした。51億円は新設の「産地資金」に回した。
 そのうえで、23年産の販売価格が標準的な販売価格を下回った場合に、その差額を米価変動補てん交付金で補償する。交付は、差額をもとに10aあたりの全国一律単価による面積払い。
 交付金の支払い基準価格は直近の「5年中3年」ではなく「18年産から20年産までの相対取引価格の平均」
とした。
 一方で23年産米の販売価格については、今年の出来秋から24年3月までの平均価格を使うことにした。そのため米価変動補てん交付金は5月から6月ごろの支払いとなることから、今回計上されている1391億円は24年度予算で確保することになる。
 固定部分と変動交付金の支払いは半年ほどずれるが農水省は、固定部分と変動部分で「60kg1万3700円を補償する」と改めて説明。補償水準を明記することで、これまで指摘されてきたような米価下落にともなって補てん水準も下がる、いわゆる「ナラシ対策ではない」と強調している。

◆「面積払い」は「前年産実績」―畑作物

 23年度から実施される麦・大豆など畑作物への所得補償交付金は、小麦60kg6360円、大豆60kg1万1310円(いずれも平均、単価は品質に応じて増減)などの「数量払」と全国一律10a2万円の「面積払い」(営農継続支払)の組み合わせで交付される。
 交付金の支払い手順は、(1)面積払を先に支払い、(2)対象作物の販売数量が明確になった時点で数量払の額を確定、(3)すでに支払われた面積払の額を差し引いて追加で支払い、となる。
 面積払については、北海道などでは当年産の作付け面積の確定時期が新年度内にずれ込む品目があるなど確認実務の課題があるため、当面は前年産の生産面積に基づいて支払うこととした。前年のその農業者の生産数量を地域単収で換算した面積とする。
 したがって、前年産作付実績がない面積部分は、面積払いはなく数量払いのみの対象となる。ただ、これは面積払(営農継続支払)という先払いが受けられないだけ。新たに作付けた面積について数量払を申請した部分については、その交付時には先払い部分の差し引きはない。支援水準としては変わりがないことになる。

◆地域の協議会で支援設定も可能―産地資金

 水田でつくる麦・大豆、新規需要米などには今年度の水田利活用自給力向上事業と同じ水準の「水田活用の所得補償交付金」が支払われる。
 モデル事業では麦、大豆等の支援水準を維持するため追加的に支払う激変緩和措置として予算が確保されたが、来年度からはこれに相当する「産地資金」を新設する。
 総額は481億円。このうちモデル対策での激変緩和調整枠と「その他作物」への支援のために400億円(水田部分)を配分し、畑地における畑作物への支援のために30億円(畑地分)を配分する方針。
 残り51億円は米の生産数量目標の減少にともなう米の所得交付金の減額分。これは米の生産数量目標の減少程度に応じて配分。戸別所得補償制度の対象ではない備蓄米生産のための支援などに活用することが想定されている。
 産地資金は、都道府県が助成対象作物と単価等を設定するが、地域段階での協議会(農業再生協議会)に枠を配分しそれぞれ支援内容を設定することも可能だとしている。

◆利用権設定面積が対象―規模拡大加算

 農地利用集積円滑化団体が農地の「出し手」と「受け手」の間に入って、面的集積された農地に農業者が利用権を設定し(設定期間6年以上)経営規模を拡大した場合、規模拡大加算交付金が支払われる。
 単価は10aあたり2万円で交付は1年かぎり。予算額は100億円で5万ha分の交付を見込む。規模拡大の加算交付金の申請期間について農水省は来年3月までとする予定で、夏以降の営農で規模拡大した場合なども対象となる。
 米、麦、大豆など戸別所得補償制度の対象品目が対象だが、畑地の飼料作物、野菜、果樹など栽培する農地も特例として交付対象とする。このため野菜、果樹などの専業経営で戸別所得補償制度への非加入農業者もこの規模拡大加算の対象となる。
 対象農業者の経営規模などの基準はなく農地利用集積円滑化事業を活用して規模拡大した農業者すべてが対象。
 また、耕作放棄地に麦、大豆、そば、なたねを作付けた場合に再生利用加算として平地10a2万円、条件不利地同3万円を最長5年間支払う。耕作放棄地解消は大きな課題だが、水田として再生させなくても、畑地として再生利用することを支援する。予算額は40億円。
そのほか、畑で輪作作物の間に1年間休んで地力向上作物をすき込む場合に、10a1万円の緑肥輪作加算交付金も支払われる。

◆集落営農の法人化に40万円支援

 集落営農組織を法人化した場合、法人登記等の事務費相当分として1法人あたり定額40万円を助成する。予算は戸別所得補償制度推進事業費から。23年4月以降の登記組織が対象となる。
 これと合わせ集落営農組織が、新たな参加構成員から農地を借りて利用権設定した場合は前述の規模拡大加算も交付されることになる。そのほか集落営農組織の経理事務担当者など育成のための経費支援も行う方針だ。

23年度農林水産予算の概要

(2011.01.05)