◆農業・協同組合は平和の中でこそ発展する
「一人は万民のため、万民は一人のため」とする協同組合運動の精神、「地域・全国・世界の協同組合の仲間と連携し、より民主的で公正な社会の実現」をめざすJA綱領の理念は憲法九条の理念と一致する。平和な世の中でこそ、農業と食料安全保障、協同組合は発展できる―。
こういった考えから、JAグループ関係者に協同組合運動として憲法九条を守る平和運動を呼びかけようと、宮城県農協中央会元会長の駒口盛氏らが呼びかけ人となって平成22年8月31日、「みやぎ農協人九条の会」が結成された。
結成当初は呼びかけ人11人、参加者32人だったが、わずか4カ月で呼びかけ人はJAグループ外の研究者なども巻き込み40人を超え、参加者は70人ほどに倍増した。
全国各地のさまざまな団体が九条の会を設立しているが、JA関係者が主体となっているのは珍しく、県内外で注目を集めている。
会の役員は、顧問が木村春雄宮城県農協中央会会長、会長が阿部長壽JAみやぎ登米前組合長、副会長が三浦弘康JAみどりの元専務。幹事長を伊藤隆之JA加美よつば元組合長、幹事を官澤健一宮城県農協中央会元副会長らが務める。
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あいさつをする阿部会長
◆「なぜ日本人に食料自立の思想がないのか?」
講演会はTPPの本質と米価下落の問題点について知り、農業だけでなく地域経済や平和社会全体への影響についても考えようと開催。JA関係者だけでなく、生協や一般消費者の来場も多く、予定人数を大幅に上回る110人以上が参加した。
阿部会長は「TPPには政治的軍事的戦略の側面があるのではないか。その本質を究明し、無関税の自由貿易が真に国益となるのかを考えたい」と学習会のねらいを述べた。
講師は会の呼びかけ人でもある東北大学の河相一成名誉教授が務めた。参加者には「TPPについて理解が深まってよかった」と好評だった。
会場との意見交換では、次のような意見があった。
「ヨーロッパの国々は国家国民が一丸となって食料自給率を高めようとしている。日本はなぜ食料自立の思想がないのか」(JA役員)。「本当に貿易自由化と国内農業の再生を両立できるのか、疑問を感じる」(消費者)。「農家と非農家が手を組んで地域農業づくりをすべきだ」(同)、など。
会は今後も組合員を中心にさらなる参加を呼びかけ、戦争の悲惨さと平和を訴える活動をすすめていく方針だ。
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100人を超える参加者は最後まで真剣に聴き入った
【九条の会】
憲法改定が大きな話題となった平成16年6月、作家の井上ひさし氏、大江健三郎氏など9人が日本と世界の平和をめざす日本国憲法第九条を守ろうと呼びかけて始まった。現在、全国各地で7500以上の会が結成されている。