◆実需者との結びつき強める
1月に決めた今後のJAグループの米の生産・販売戦略では、これまでの玄米販売中心から精米流通を基本としたビジネスモデルへの転換をめざすことなどを盛り込んでいる。
現在は、産地から玄米を消費地に供給し消費地でとう精するのがほとんどの産地の販売形態。これを産地の精米工場でとう精した米を直接、消費地に届けるという「精米流通」への転換をJAグループの米穀事業の柱にすることをめざす。
消費者からは安全・安心への関心の高まりに加えて、経済性・環境への配慮なども求められている。精米流通は玄米流通にくらべて、糠の分だけ輸送量も減り、環境への負荷も少ないと考えられる。こうした点でも消費者ニーズに応じたビジネスモデルとなる。
また、生産者が生産した米をどの実需者を通して消費者に食べてもらっているのか、お互い顔の見える生産と消費に結びつけていくことにもなる。現在のように玄米販売では、たとえば業者間取引によって転売されることもあり、売り先が特定されないだけでなく価格形成にも影響する。今後は、安定的な価格と販路の確保によって安定した生産や営農活動の確立をめざすことも産地にとっての課題だ。
こうした販売によって、今後の米価はこれまでのような玄米建てではなく「精米建ての価格」が基準となることも考えられ、そのための合理的な販売・供給体制が市場で評価されていくことになる。
◆設備の再編・効率化進める
提携する丸紅はダイエー、マルエツ、東武ストアなど小売事業に出資しているほか、中食・外食など首都圏を中心に多様な販売チャネルを持つ。こうした事業基盤はあるものの、産地での集荷力は弱い。そこが同社にとってもJA全農との提携のメリットとなる。
お互いの事業基盤を生かしながら家庭用商品だけではなく精米販売は中食、外食など業務用向けなども含めて精米流通を実現するためのパールライス会社などの最適な配置・設備改善なども検討していくという。
23年度の事業で実現する。協力関係を築き実現できる部分から実現させ、JAなどグループ内に実績を提示しながら、この取り組みを強化し生産者へのメリット還元につなげていきたいとしている。
なお、今回の提携について一部報道にあるようなTPPをにらんだ対応であることや中国向けを中心にした輸出の検討などについては、JA全農は「事実ではない」としている。とくに輸出については将来的には輸出に力を入れるものの現時点で具体的な計画は白紙だという。
◎JA全農の米穀事業取扱高:387万6000t、7294億円(平成21年度)
◎丸紅(株)の米穀事業取扱高:22万5000t、385億円(22年度見込み)。