◆「共助共栄」を考えたい
――まず改めてJA女性組織について、会長の思いをお聞かせください。
「JAの女性組織」という、その原点をもう少し見つめたほうがいいのではないかと思っています。
かつて私に女性組織活動を教えてくれた先輩は、JA組織が掲げている「共存共栄」は確かに大事だけれど、「共助」も大切だよ、と言っていました。共存共栄ではなくむしろ「共助共栄」のほうが分かりやすいのではないか、と。
みんなで助け合って、みんなでよくならないとだめだ、単に他人の存在を認めるというのではなくてJA運動には助け合いが必要なんだ、ということでした。
まさに今は高齢化が進み、ましてや農村部は過疎になっていますよね。そういうときにはみんなで助け合わないと、地域ごと沈んでしまう。だから助け合いがJA運動の基本です。
ところが、今のように子どもが少なくなっているときには、相互扶助と言っているだけでは若い世代の負担が大きくなる。だから自分たちがいかに元気でいるかという意味での相互扶助が本当に大事になっていて、その元を成しているのが女性組織の活動だと思います。女性は家族の健康、生活を守っています。食生活の改善などいろいろなことをやってきました。今後もこれをやれるのはJA女性組織しかないと思っています。
――自分たちの活動を見えるようにする、発信することも大事になっていますね。
直売所の運動も女性たちから始まったわけですが、直売所は1人でできるものではないですね。大きい農家も小さい規模の人も一緒にやるから品数も多くなるし、お互いに助け合いながらやるから直売所は継続します。
◆自らもっと情報発信を
問題は、こういう活動を周りに見えるようにしていかなくてはならないということです。福祉活動などいろいろな活動が増えていることは確かで、女性組織はそれぞれ地域の最先端の取り組みを担っています。
それを発信しているかどうか。何も新しい活動をやる必要はなく、どう周りに見えるようにするかを考える時期ではないかと思います。新3か年計画では「気づこう」というスローガンを掲げていますが、情報を発信すること、そこが大事だと気づくことも大切です。
とくに、今、情報発信が大事になっています。自分たちの活動を知ってもらうだけではなくて。
私は地元の「かあちゃんフェスティバル」では今回、TPPについて話そうと思っています。
これは今やらないといけない緊急の問題ですから、ともかくみんなに話そうと。その時々でやらなければいけないものは、その場で情報を流すことも大事だということです。
TPP問題で訴えたいことは、若い人たちに影響する問題だということです。これは、たとえば関税を10年でゼロにするといった協定でしょう。それを考えると10年後に私たちを支えてくれる若い世代がどうなるか。5年、10年先を見据えて、今、ここで反対していかないと。将来の地域を支える世代が苦しい思いをしないようにしなければいけない。
◆TPPは地域全体の問題
JAグループあげて取り組む1000万人署名運動では、これは農業など第1次産業の問題ではないことも訴えていく必要があります。関連している事業にも大きな影響があるんだよ、と。
1個100円のリンゴのうち、自分の手取りになるのは30円ですが、あとの70円は全部、他の産業にも回っているということでしょう。ということは農業がなくなればその人たちの仕事だってなくなるということです。たとえば地元のJAではリンゴを500万ケースも発送して、その運送は多くの地元の業者が担っています。そういうことも強調していきたい。
その点でいえば、直売所にもTPPの問題点を説明できる人が必要だと思いますね。直売所の利用者にも署名してもらう運動展開が必要だと思います。
全国女性大会では特別決議もします。これは今年のいちばん大事な問題ですから。
◆正組合員化を積極的に
――JAへの女性参画については何が大事でしょうか。
やはりまず女性が正組合員になる取り組みが大事だと思います。高齢化が進み組合員がどんどん減っているなか、農業を担っているのは女性ですから、そこは女性も意識を変えていかなければならないと思います。進んでいるJAもありますが、半歩でもいいから前に出てくれたらと思いますね。
自分で出資すれば意識も変わるし、意見も出そうという姿勢につながります。その背中を押してあげることが大事で、それも担うのが女性組織ではないかと思います。
その一方でJAトップは女性の意見を反映するように女性理事を登用するなどの取り組みをしてほしいですね。女性組織の活動としては、正組合員になろう、というボトムアップの活動をし、JAからはトップダウンで女性参画の仕組みをつくる、これが一緒になっていけばいい結果が出るだろうと思います。