パネルディスカッションは東京農業大学名誉教授の白石正彦氏をコーディネーターに、JA新ふくしまの吾妻雄二組合長と長沢順子女性部部長、JA紀南の中家徹組合長と高山和代女性会会長がパネリストとして出席し、女性のJA運営参画への取り組みを交えて発言した。
◆上に立つ人の理解あってこそ
JA新ふくしまは現在、8人の女性理事がおり、「総代からは女性の比率が高すぎるのではないか、という意見もあったが、女性が男性の間に入り活発な発言が出ることで、男性の意見も前向きになっている」と吾妻組合長は報告。また長沢部長は「女性理事に対する男性からの厳しい目もあったが、組合長をはじめ、上に立つ人たちの深い理解があった。女性部活動がうまくできているのも組合長や事務局のサポートあってのこと」と述べた。
◆「風土」づくりが肝心
組合員の数を増やすポイントは女性にあるというJA紀南の中家組合長は「女性に見捨てられたJAに未来はない!」として会場から共感の拍手が起こった。
「JA事業は女性に考え、担ってもらう方が高齢者介護や食の問題など、よいものが増えている」として女性の力がJA事業の活性化に貢献していることを強調したうえで「女性参画が進まないのはやはり『風土』ができていないから。どんどんいろんな活動を行い、出る杭となって風土を作っていくことが重要。あらゆる場面でがんばる姿を消極的にならずに見せてほしい。そうすることで女性の力が発揮できる」と述べた。
高山会長からは積極的に支援を進めている目的別のグループ活動が地域貢献と会員の増加につながっているとの報告があり、今後の女性会活動を活発にしていくために若い女性をはじめ、会員の加入をどう進めていくかが課題だとした。
(写真・上から)東京農業大学名誉教授・白石正彦氏、JA新ふくしま・吾妻雄二組合長、長沢順 子女性部部長、JA紀南・中家徹組合長、高山和代女性会会長
◆組合長のリーダーシップ
女性参画を進めていくうえで、両JAとも課題は▽高齢化による部員の減少、▽若い世代の加入が進まないことと共通している。
中家組合長は「非農家である准組合員が増えるなかで、これから新しい女性組合員をどう組織化していくか、女性大学の卒業生も女性会に加入してもらえるよう、OB会をつくって女性会とのつながりをもたせることが必要」だとした。
吾妻組合長は「組織を知らない人がまだいるのでもっと活動内容のPRが必要だと思っている」、長沢部長は「農業で生計を立てていけるのであれば就農者が増えると思うので、まずその基盤づくりも大事」だと述べた。
白石氏は「正組合員の3分の1、准組合員の50.7%が女性であるJAの組織基盤を男女共同参画に切り替えるのは、組合長のリーダーシップが大きいという印象を受けた。“トップのリーダーシップ”と“女性部リーダーの決意”という二つの歯車があってJAと女性部の未来があるのではないか」と総括した。
◆TPPの特別決議を採択
大会では大会宣言とあわせて「TPP交渉参加断固阻止に関する特別決議案」を採択した。(別掲)
閉会のあいさつで藤木智恵子副会長は「女性部にとって最大の問題は男女共同参画とTPP問題だと思う。近所からはTPPって何だろうと言う声を聞くし、農業をやっている人たちもよくわかっていない。女性は『ここだけの話』が好きだが、ここだけの話だけにするのではなく、みんなに教えてほしい」と述べた。
◎大会宣言(一部省略)
国が突然TPPへの参加を検討しはじめるなど、農業や地域生活にとって、これまで経験したことのない不安に直面しています。
今こそ農業者であり生活者である、私たちJA女性組織メンバーは、女性ならではの視点と意見をもって、さまざまな課題に「気づき」、「見直し」、自らの組織を変えていくとともに、仲間とともに地域・くらしを守る取組みを強化していく必要があります。
協同組合を通じた女性の経済活動が農業・農村の持続的な発展を促すことが国際的にもうたわれているなか、2012年の国際協同組合年にむけて、私たちは、自信と誇りを持って「行動し」、ひとりひとりが満足できるくらしを実現するために、次のとおり宣言します。
一.「新たな協同」を実践し、男女が共に手を携えてJA運営に参画します。
一.身近なことや国内外の情勢に常にアンテナを張り、学習機会を積極的に設け、JA女性組織の基盤を充実させて、食と農業を守っていきます。
一.私たちのいきいきとした活動や大地に根ざした生活スタイルを社会に発信し、世代をこえて地域をまきこみ、くらしと農業の未来を育てます。
◎TPP交渉参加断固阻止に関する特別決議
私たちJA女性組織はかねてから、食の安全・安心と地域の農業の振興のために、食料自給力の向上運動や地産地消運動に精力的に取り組んできました。
ところが政府が突然参加を検討し始めたTPPは、原則として例外を認めない関税撤廃を目指した自由貿易協定であり、アメリカやオーストラリアなど世界最大の農産物輸出国と締結されることになれば、安価な農産物の大量な輸入により日本の農業・農村は壊滅的な打撃を受けることになります。
農業の衰退だけでなく、このままでは農村地域の活力が失われるとともに、「食」の安全・安心、健康で風土・季節にあった食を楽しむ伝統、美しい農村風景など、経済活動だけでなく、健康やくらしを彩る文化や伝統までもが失われることになります。
次世代を育み、地域とともにくらしを支えてきた私たちJA女性組織メンバーはこの危機をのりこえるために、農業者のみならず、地域の様々な団体、ネットワークを通じて、このような危機意識を広め、「食」と「農業」と「ゆたかなくらしの価値観」を守るために一致団結してTPPへの交渉参加を断固阻止する決意を表明します。