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日本の医療が危機に 日本医師会がTPPに懸念表明

 日本医師会の中川俊男副会長は1月26日の会見で医療分野の規制改革とTPP(環太平洋連携協定)についての見解を公表した。

 政府がTPP参加に向け情報収集と協議開始を閣議決定した昨年11月の「包括的経済連携に関する基本方針」には、農業改革のほかに、看護師などの海外からの人の移動については今年6月まで基本方針を策定、「国を開き海外の優れた経営資源を取り込む」ための規制改革については今年3月までに具体的方針を決定する、ことも盛り込まれている。
 日本医師会はこうした政府の方針により、問題が外国人医師の受け入れにも拡大する可能性があることや、海外の経営資源取り込みによる外資による病院経営などの懸念があるとしている。
 外国人医師や外資参入を受け入れると、
 (1)日本の公的医療保険では診療報酬が決まっており営利目的の企業や高額報酬を目指す人には魅力がない→病院は高額の自由診療をめざす→高額の自由診療はお金がない人は受けられない。
 (2)クロスライセンス(お互いの国の医師免許を認めること)を認めると→教育水準の違いから日本の医療水準の低下が懸念
 (3)高額自由診療の病院が増えると→病院は自由診療でよい、となる→国は公的医療保険の診療報酬引き上げはしない→公的医療保険で診療していた地方の病院が立ちゆかなくなる……などの問題を指摘し国民皆保険制度が終焉することになりかねないとしている。
 日本医師会は医療に市場原理を導入しさらに経済連携の名のもとに外国資本などを受け入れれば、お金がなければ治療を受けられない時代になるとして「日本人の生命を外国を含む産業に差し出してよいのでしょうか」と訴えている。
 TPP交渉では24の作業部会のうち、サービス分野で医療・医薬品などの貿易ルールが検討されているといわれる。国内の規制制度改革については政府は3月に閣議決定する方針だ。

(2011.02.07)