農政・農協ニュース

農政・農協ニュース

一覧に戻る

消費者庁が農薬で初めてのリスコミ開催  上園全農肥薬部次長も基調講演

 消費者庁は、農薬のリスクと安全をテーマに、消費者・事業者・専門家等の情報共有と理解促進のための意見交換会を2月8日、東京で開催し食品や農薬関係、消費者、学生など約130名が参加した。農薬でのこうしたリスクコミュニケーションを消費者庁が開催するのは初めてのことで、JA全農肥料農薬部の上園孝雄次長も登壇し、基調報告を行った。

食品安全セミナー「農薬について、知りたいこと、伝えたいこと」 この意見交換会は、食品安全セミナー「農薬について、知りたいこと、伝えたいこと」と題して開催された。まず、残留農薬研究所の加藤保博理事が「農薬のリスク管理はどのように行われているのか」と題して、ADI(許容1日摂取量)の設定方法。農薬登録のために必要な膨大な試験項目。使用基準(農取法)と食品衛生法による残留基準値の設定方法などについて詳しく説明。さまざまな公的な調査で「流通している農産物における農薬の残留レベルは低く」食品を通じた摂取では問題となるものではないことを報告した。

◆「防除暦」は世界に誇れる仕組み

 次いで基調講演した上園孝雄全農肥料農薬部次長は「生産現場からの報告」として、農作物を栽培すると多くの病害虫・雑草が発生し防除は不可欠であるが、最近は効果の高い成分の開発や長期間にわたり溶出コントロールする製材技術の革新で、かつてよりかなり省力化と農薬使用量の削減が進んできている。
 そして多数の農薬のなかから適切な薬剤を選ぶためには「地域の栽培方法・病害虫の発生動向・気象を十分に熟知しておく必要」があり、その知識と経験を活かして「ベストな防除法」を選択するために各JAや生産部会などで作成されているのが「防除暦・栽培暦」だが、海外にはこのようなサービスや仕組みはなく「世界に誇る仕組み」であり、「日本の農産物がクリーンなのはこの防除暦によるところが大きい」と語った。
 さらに、JAグループでは生産者が正しく農薬を使うために、40年前から「農家・農産物・環境」という3つの安全を守る「安全防除運動」に取り組んでおり、そのなかで使用した農薬とその濃度、使用回数、使用日などを記帳する「防除日誌の記帳」にも取り組み「安全・安心の見える化」を進めてきていることも報告した。
 次いで澤登早苗恵泉女学園大学教授が「有機農業とは何か―農薬の功罪―」と題して基調報告した。
 その後、阿南久全国消費者団体連合会事務局長と太田憲治コープネット事業連合品質保証本部本部長代理が加わりディスカッションが行われた。

◆消費者にわかりやすく伝えることが大事

 そのなかで太田氏は農薬取締法の改正(03年施行)、食品安全基本法制定(03年)、ポジティブリスト制施行(06年)など社会的システムの整備が大きく前進したことにより、「農薬のリスクは法令順守がもっとも重要な管理手法」であり、生産者が「農薬の使用基準を守ることが必須」だと強調した。
 会場からの質問を交えたなかでは、農薬の安全性をどう消費者に伝えるかが大きな課題だと提起され、マスコミが「基準値の何倍も残留」などセンセーショナルな報道をすることも不安を煽る大きな要因だと指摘された。
消費者庁が農薬で初めてのリスコミ開催 また、太田氏は「ADIで説明しても消費者には理解しにくい」のでその作物を「何キロ食べたらなど、健康への影響を正確に伝える」ことが大事で、生協への問い合わせでは子どもが食べたときの心配が多いので「体重20kgの子ども場合は…」と丁寧に説明する必要があると指摘。
 上園次長は、「全農として、生産者に安全な農産物作りと適正防除について、さらにしっかり伝える努力をして」いくことと、安全防除運動をさらに強化し「新しい安全防除運動」を検討していきたいと語った。
 このセミナーは3月2日に仙台市でも開催され、上園次長も基調講演する。

(2011.02.10)