同国のオークランド大学の教授らが執筆した。
食品の安全をめぐる問題点を指摘した箇所では、日本が登場する。わが国は残留農薬についてポジティブリスト制度を導入、基準値が定まっていないものについては「一律基準」として0.01ppm基準を設定している。
これに対して米国の最近の報告文書では「(日本に)セロリとイチゴを輸出することができなかった」と指摘したうえで、「米国の最大残留許容値と異なるものを用いるなら、それは深刻な貿易障壁であり、米国農業者が著しい制裁を受けることになる」と警告していることを紹介している。
また、遺伝子組み換え食品、バイテク食品に関する表示義務制度は、「すべて貿易に対する正当化しえない障害」と米国は考えている、と著者は指摘。豪州とNZにはGMOの表示義務制度があるため、TPP交渉ではこれが議論になるのは間違いがないが、「米国の要求に応じるとしたら、各国の自主的選択、民主主義の侵害が明確になる」と主張している。
こうした事例を挙げ、各国がどのような検疫措置を実施するか、どのような農薬を製造し利用するかなどは「各国政府に決定する権利が認められるべき」だと説き、TPPがこの権利を侵害するべきではなく、その影響は「何を輸出できるか、輸入できるかを越えて、国民の健康、自然環境まで及ぶ」と訴えている。
そのほか既存のFTAでもすでに政府が外国企業に訴えられている事例を紹介。公衆衛生にも深刻な影響をもたらす例も挙げている。
(表紙:「ALLEN&UNWIN」HPより)