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TPPは地球全体の利益になるのか? 食・農・環フォーラムの学習会より

 TPP(環太平洋連携協定)は地球全体の利益になるのか?
 食料・農林漁業・環境フォーラムが2月16日に開いた学習会では、TPP交渉の課題などを学び、目先の経済的利益だけを追求するTPPの問題点などが強調された。

◆経団連声明の問題点

 学習会ではJA全中農政部の小林寛史次長(WTO・EPA担当)が講演した。
 TPPには現在、米国をはじめ9カ国が交渉参加をしているが、これに日本を加えた10か国のGDPでみると米国67%、日本24%で計9割を超える。豪州は4.7%で他の7カ国計では4.2%に過ぎない。
 小林次長は「TPPは実質的に日米FTAだ」と指摘した。JAグループは、この交渉は除外や例外品目を認めない全品目の関税原則撤廃をめざすもので、米国、豪州といった輸出大国が参加していることから農業分野での協力は考えられない、と強調している。
 一方、このTPPに政府が、昨年、参加検討を表明した際、日本経団連はTPP締結は「2020年までのFTAAPの実現」に向けた一歩になるとして歓迎する趣旨の声明を発表している。


◆柔軟性はAPECの原則

 FTAAPとは「アジア太平洋自由貿易圏」のことで、2006年に当時のブッシュ大統領がAPEC会合で提唱した。
 しかし、APECではすでに1994年にボゴール宣言(インドネシア)を採択している。そこではアジア太平洋地域での自由で開かれた貿易、投資を目標に掲げて、先進国は2010年、途上国は2020年までにその実現をめざすとした。ただ、内向きの貿易ブロックの創設には強く反対するとともに、WTOへの積極的な参加を求めてもいる。
 また、具体的な行動指針を決めた1995年の大阪行動指針では、各国の多様性を認め、この目標実現に向けた柔軟な対応を認める宣言を採択、小林次長は「その後、05年に行動指針は改訂されたが、柔軟性の原則はそのまま維持された」と指摘した。
 こうした柔軟性原則を認めているAPECにおける貿易促進方針と、TPPはまったく反しているといえる。
 にもかかわらず「経団連はTPPがFTAAP実現の一環だという。これは論理のすりかえだ」と小林次長は指摘した。
 そのうえで世界の飢餓人口が増えていることなどを挙げ、「地球環境を破壊し、目先の経済的利益を追求し、格差を拡大、世界中から食料を買いあさってきたこれまでのこの国の生き方を反省しなければならない」という昨年11月の特別決議を改めて紹介し「TPPは地球全体の利益になるのか、と考えなければならない」と訴えた。

(2011.03.04)