◆被災現場に視点を置いた対策を
3月11日の地震と津波による集落の喪失、用水路の崩壊、農地の塩害など、農業基盤の損失は計り知れない。さらに福島第一原発事故の影響で一部の農畜産物が放射性物質に汚染され政府が出荷・摂取制限を出したほか、その風評被害によって生産現場は大きな被害を受けている。
新世紀JA研究会の代表らは早急な対策が必要不可欠であるとして、▽風評被害の一掃と農業面の緊急的補償、▽無利子・無担保融資の実施、▽連合組織による緊急支援、▽JAグループによる支援や募金・義援金活動などの全国的取り組み、の4項目を要請した。
要請先は、JA全中、JA全農、農林中央金庫、JA共済連、民主党、自民党、農水省の7カ所。
要請活動に参加したのは、鈴木代表のほか、藤尾東泉副代表(岩手・JAいわて中央代表理事組合長)、足立武敏副代表(福岡・JAにじ代表理事組合長)、高橋信茂氏(東京・JA東京みどり代表理事組合長)、古谷茂男氏(神奈川・JAはだの代表理事組合長)、萬代宣雄氏(JA島根中央会会長)、上村幸男氏(JA熊本経済連会長)ら。
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(左から)土屋博JA全中常務、鈴木代表、藤尾副代表、足立副代表、古谷氏
◆JA経営への支援が必要
鈴木代表は地元福島県の窮状を訴えるとともに、「生産者や地域への補償はあっても、JA組織への支援をどうするかは見えてこない。JAグループとしての考えを出してほしい」と各所で要望。また、3月31日に福島県天栄村の牛肉から暫定基準値を超える放射性物質が検出されたという誤報によって県産牛肉の価格が暴落したことをうけて、「あってはいけない誤りだ。速やかに厳重な抗議をしてほしい」とJA全中などに訴えた。
藤尾副代表は「(JAいわて中央は)県下8JAの中で被害がもっとも少ないと見込まれているが、それでも被害額は1億円を超える。震災後1週間は真冬のような寒さだったこともあり深刻な燃料不足となったが、系統組織の連絡がうまくいかず組合員や地域住民からの信頼を失う結果になった」などと被災地の現況を伝えた。
そのほか、「全国連で災害対策本部を立ち上げたとのニュースは見たが、その後の動きがまったく見えない」「決裁権のある人材を現地に送って、現場の悲惨さを実際に見て感じてほしい」「今こそ、協同組合運動の見せ所ではないか」などの意見、要望を伝えた。
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平野内閣府副大臣(左)に要望書を手渡す鈴木代表
◆JAグループで合計100億円を支援
JAグループでは全国連を中心に合計100億円の復興支援金を被災地へ送ることを決めているほか、風評被害や東京電力への賠償責任要求などについては「農業者補償に最大限注力した形で進めたい」(加藤一郎JA全農専務)、無利子・無担保融資については「2000億から3000億ほどの規模で対応する予定」(向井地純一農林中央金庫副理事長)と返答した。
民主党の平野達男内閣府副大臣は、放射性物質による農畜産物の汚染とその風評被害について、「専門委員会を設置して対応したい」とし、「畜産については口蹄疫の場合と同じく、全頭買い取りということも有り得る」との考えを述べた。