農政・農協ニュース

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価格改訂前の駆け込み需要増える 世界的不作で価格高騰  2010/11年の小麦動向

 政府は3月30日、食料・農業・農村政策審議会食料部会の答申を受けて2011年度の「麦の需給に関する見通し」を発表した。「見通し」と併せて、国産小麦で新品種の導入が進んだことや国際相場の推移などを示した「動向」もまとめて紹介する。

2010/11年麦の需給動向

◆2011年総需要量574万トン、国産は66万トン

 食糧用小麦の国民1人あたりの年間消費量は、1967年に31.6kgとなって以来、40年以上ほぼ変わらず31〜33kgほどで推移しているため、小麦の総需要量見通しは過去5年の平均値で発表している。
 11年度の総需要量見通しは574万トン。うち11.5%にあたる66万トンが国産流通量で、511万トンの外国産小麦が輸入される見込みだ。国産流通量66万トンの内訳は、年度内供給量が38万トン、22年度からの繰越在庫が28万トン。
 10年度は、国産小麦が不作で単収が大きく落ちこんだため外国産小麦を買い増やそうという動きがあったほか、11年4月1日から政府の小麦売渡価格が前期比で18%と大きく値上がることが決まったため、値上がり前に大量に仕入れようという動きもあり、輸入量が09年度に比べて55万トンほど増え539万トンだった。
 需要量も当初見込みを30万トン以上上回る598万トンだった。
 大麦・はだか麦の総需要量見通しは36万トン。うち国産は9万トンで、輸入は27万トンの見込み。
 大麦・はだか麦の国民1人あたりの年間消費量は、1960年度に8.1kgだったがその後減り続け、75年度ごろから1kg以下に。2009年度は0.2kgだった。

国産小麦の生産量と作付面積の推移


◆収穫量、品質ともに低調だった2010年産

 国産小麦の作付面積は06年度の21万8000haをピークに漸減傾向だ。10年度の作付面積は20万7000haで、前年比1400ha減だった。関東や九州で二条大麦への作付転換があったことが主な原因。
 収穫量は、春先の低温と日照不足、北海道で出穂期から収穫期までの高温・降雨の影響があり単収は15%減と大きく落ち込んだため、前年比10万7000トン減の57万1000トンだった。
 品質も全体として低調で、過去5年間(17〜21年産)の普通小麦の1等比率76.8%を21ポイント以上下回る55.4%だった。特に北海道では1等比率が5割を切るなど落ち込みが顕著だった。
 大麦・はだか麦は主食用や焼酎用への需要が堅調だったため、作付面積は前年比770ha増の5万9000ha。しかし天候不順などの影響で、収穫量は前年比10%減の16万1000トンだった。


◆「ホクシン」の大半は「きたほなみ」に

 10年3月に策定した「食料・農業・農村基本計画」では、20年度の生産数量目標を小麦180万トン、大麦・はだか麦を35万トンと定めた。生産を増やすためには、すでに国産利用率が7割ほどある日本めん用の品種よりも、利用率1割以下のパン・中華めん用品種の生産拡大を図るべきだと指摘している。
 パン用品種は、北海道で赤かび病に弱く収量が安定しなかった「ハルユタカ」が減り多収品種の「春よ恋」が7119haと増えた。東北では対病性に優れた「ゆきちから」が1477ha、東海以西ではパン、中華めん、醤油などにも使える「ニシノカオリ」「ミナミノカオリ」がそれぞれ2700haほどと、ここ10年ほどで育成された品種が着実に導入されている(数字はすべて2010年度)。
 日本めん用では、北海道で「ホクシン」が7万3000haほどあったが、06年育成の新品種で多収で粉色もよい「きたほなみ」が3万haと急伸した。11年産の作付けはほとんどが「きたほなみ」に切り替わる見込み。

国内産小麦の新品種の普及状況


◆5年前と比べて2〜3倍 国際価格

 世界の麦需給は、ロシア、EU、カナダなどの干ばつ、熱波、洪水などの影響で3年ぶりに生産量が消費量を下回る見通しだ。
 小麦は消費量6億6300万トンに対し、生産量6億4760万トン。期末在庫は1億8190万トンで在庫率は27.4%と、前年比2.8ポイント減。
 大麦は消費量1億2420万トンに対し、生産量1億3840万トン。期末在庫は2210万トンで在庫率は16%と、前年比9.3ポイント減と大きく落ち込む見込み。
 大豆、トウモロコシも含めた穀物全体でも生産量21億7880万トンに対し消費量は5000万トンほど多く、期末在庫率は3年ぶりに20%を下回り19.5%ほどになる見通し。
 小麦の国際価格は、08年後半から1ブッシェル5〜6ドルで推移してきたが、10年7月にロシアが小麦の輸出を禁止してから上昇し始め、10/11年度の米国産トウモロコシの生産量減や11/12年度の米国産冬小麦の土壌水分不足などが懸念されたため、同10月以降も価格は上昇を続けた。
 11年1月現在で1ブッシェル8ドルを超え、5年前に比べると2.3〜3倍ほどの価格で推移している(価格はすべてシカゴ相場)。

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(2011.04.06)