農政・農協ニュース

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まず3月末の被害とりまとめ 東電への損害賠償 JAグループが請求へ

 福島第一原発事故による農産物の出荷停止などの被害に対する補償請求について、JAグループは被害農家の営農と生活継続のため、当面3月末の被害をとりまとめ請求を行っていくことを決めた。

◆焦点は損害範囲

 今回の被害は政府の責任も当然あり、国への補償を求めることは考えられるものの、早急に支払いを実現するため、JAグループは原子力損害賠償法(原賠法)に基づいて「東京電力もしくは原子力損害賠償審査会への請求・申立」を行っていくことを基本方針としている。
 審査会が立ち上がれば損害範囲(和解範囲)を示す指針が公表される。その損害範囲がJAグループが求める内容であれば、和解が成立。訴訟ではないため、争うことなく賠償金が支払われる、というのがこの仕組みだ。
 そのためJAグループは国が設置する農業被害に関する連絡会議に参画し、そこで示された請求の考え方や基準などに基づいて審査会に損害をとりまとめて申請し「和解の仲介の申立」を行っていく。
 その際、対象とする被害は(1)放射性物資の直接の影響による出荷停止等の被害、(2)出荷自粛や、今回の原発事故を理由とした取引先からの引き取り拒否や価格下落など、相当の因果関係のある被害を優先する。そのほかJAや連合会の被害についても取り上げる。
 (2)はいわゆる風評被害だが、JAグループはこれも損害範囲だとして、まずは審査会に対して「農業者の立場をきちんと認識してもらう。風評被害は当然、被害だと主張していく」(JA全中・伊藤澄一常務)との考えだ。
 かりに審査会が示した損害範囲と異なる場合、その損害範囲以外の内容について賠償を求めるとなれば訴訟となるが、そうなれば時間、費用がかかる。そのため審査会に対し「損害範囲」についての考えをしっかり主張していくことが重要になる。

◆伝票などの保全を

 請求と申立など損害賠償のとりまとめは県中央会単位(県協議会)で行い、全国段階(JAグループ福島原発事故農畜産物損害賠償対策全国協議会)が集約する。申立から支払まで組合員コードなど統一コードを使う。ただし、生乳については県酪連が行っていることから今後調整をする。
 被害請求は1カ月単位でとりまとめることとし、当面は3月末の被害とりまとめを行う。現在、全国段階で生産者が記入する損害記録用紙を作成している。 全国協議会では損害額等の証拠となる「出荷・返品伝票など、どんなものでも証拠となり得ると考えられるものは保全しておいてほしい」と呼びかけている。福島県のJAでは出荷停止となったほ場の写真を撮影しておくよう呼びかけているところもある。
 なお、こうした取り組みと同時に引き続き政府・各政党に対して、特別立法による国の補償や、東電に対する早期の仮払いも求めていく取り組みも進める。 この仮払いの問題について、一部にJAグループが立て替え払いを行うとの報道がなされたが「仮払いがなされることになったとしても、その前にJAグループが立て替えるというのは極めて誤報」とJA全中は4月7日の会見で指摘、そうした事実はないとして東電による支払い、あるいは国による補償を求めることを強調した。

(2011.04.08)