農政・農協ニュース

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稲の作付制限の実施も 政府が考え方示す

 東京電力の福島第一原発事故による放射性物質の土壌汚染問題で政府は4月8日、「稲の作付に関する考え方」を示した。示された考え方によると、福島第一原発から30km圏内のほか、土壌中の放射性セシウムが規制値を超える一部地域で稲の作付制限が実施される見込みになってきた。

◆規制値はキロ5000ベクレル以上

 農水省は県に協力するかたちで4月上旬から水田の土壌中の放射性セシウムの濃度を調査してきた。
 一方で、土壌中の放射性セシウムがどの程度、米に移行するのかの指標(移行係数)も検討してきた。
 移行係数については、(独)農業環境技術研究所が1959年から2001年まで、全国17か所の水田土壌と収穫された米に含まれた放射性セシウムを分析したデータを解析した。
 解析の結果、土壌の種類によって米への移行係数に差がないことを確認。また、日常的に玄米を摂取する人のことを考え玄米への移行程度を検討して指標案を決め、専門家の意見も聞いた。そのうえで、水田土壌から玄米への放射性セシウムの移行係数を「0.1」とした。
 食品衛生法に基づく米の放射性セシウム濃度の暫定規制値は1kgあたり500ベクレル(bq)。移行係数「0.1」とされたことから、土壌中の放射性セシウムの上限値は1kgあたり5000ベクレル(bq)となった。
 この結果を受けて、政府の原子力対策本部では稲の作付制限を行う地域ついて、(1)福島第一原発からの30km圏内(避難地域と屋内退避地域)、(2)土壌検査の結果、生産した米(玄米)が食品衛生法上の暫定規制値(土壌では放射性セシウム濃度が5000bq/kg以上)を超える可能性のある地域とした。
 これまでに県が公表した検査データのうち宮城、山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川は暫定規制値を超える可能性のある土壌検査結果は出ていないが、福島県の一部地域では5000bq/kgを超える結果が出ている。
 具体的な地域については、土壌検査をもとに国と県が協議して決定。その後、原子力災害対策本部長である菅首相が稲の作付制限を行うよう指示することになっている。

◆収穫後に検査実施へ

 土壌検査の結果、放射性セシウム濃度の上限値を超えない地域について原子力災害対策本部は、“稲の作付を行っても差し支えない”、としたが放射性物質の放出が続いていることから収穫時に検査を行い、暫定規制値を超える場合は出荷制限を指示することを決めた。
 収穫後の放射性物質の検査は多くの県で実施が必要になりそうだ。
 また、作付制限や出荷制限が行われた場合は、政府は「適切な補償が行われるよう万全を期す」としている。8日の臨時会見で鹿野農相は原子力損害賠償法(原賠法)に基づいて東電が補償するよう「審査会(原子力損害賠償紛争審査会)が示す指針(損害範囲)のなかにきちんと盛り込ませたい」と強調した。
 土壌検査の結果、一部地域では主食用の稲の作付が制限される見込みだが、農水省は「飼料用米、バイオエタノール用も含めた作付制限」とする考えを示した。収穫後の分別管理や安全検査といった問題が生じるだけでなく、放射性セシウムは半減期が30年と長く、来年産以降の作付が可能かどうかも課題になることから、作付制限対象となった水田については「今年は(何も作付けず)そのままにしておいたほうが来年以降、土壌改善対策が立てやすくなる」というのが理由だ。
 また、今回は野菜、果樹などについての作付制限はしないが、収穫後に放射性物質を検査してから出荷することになるという。米と同じように暫定規制値を超えれば出荷制限となる。

(2011.04.12)