農政・農協ニュース

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東電に原発事故被害で強く抗議 JAグループ

 JAグループの「東日本大震災復興・再建対策JAグループ中央本部」は4月14日午前、第1回会合を開き、政府に対する「東日本大震災の復旧・復興および原発事故対策に関する第一次要請」を決めるとともに、東京電力に対する抗議文もとりまとめた。
 会合後、茂木守本部長らは東京・内幸町の東電本社を訪れ、清水正孝社長に対し「甚大な被害を農業者に及ぼしていながら、今日まで何らの説明、謝罪、賠償に向けた対応をしてこなかった。断じて許すことはできない。激しい怒りをもって強く抗議する」などとする抗議文を手渡した。

 

面会後、記者の質問に答える茂木会長(中央)らJAグループ代表団

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面会後、記者の質問に答える茂木会長(中央)らJAグループ代表団

◆怒りを込めて

東電本社1階ロビーで対応した清水社長(左から2人目)

 

 清水社長らは東電本社の1階ロビーで対応。
 茂木会長は「原発事故で大変な農業被害が出ている。にもかかわらず何の説明もなく謝罪もなく、今日まで来ている。今日は被災県の責任者も来ている。ぜひ誠意ある回答を態度で示していただきたい」と話し、JA福島中央会の庄條徳一会長が「怒りを込めて」と抗議文を手渡した。
 清水社長は「大変みなさんにご迷惑をおかけしていることに、改めて深くお詫びさせていだきます。ただいま頂きました抗議文をしっかりと重く受け止めてこれから関係機関とも協議をしてできる限りの対応をしていきたと決意をしている」などと述べた。
頭を下げる清水社長に茂木会長は改めて「社長さん、是非とも一刻も早く誠意ある対応を示していだきたい」と強調した。
 ただ、清水社長の対応はここまで。その後、別室で廣瀬直己常務が現場からの訴えを聞いた。

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東電本社1階ロビーで対応した清水社長(左から2人目)


◆農業を営める環境、土壌を返せ

 別室では廣瀬常務が「皆様に多大なるご迷惑をおかけしました。お詫び申し上げます」と頭を下げた。
 茂木会長が改めて東電の「不誠実な対応」に抗議を示し、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉各県の代表らが現場の苦しみを訴えた。
 庄條会長は「多くの農家は、先祖伝来の農地を離れていつ帰れるかも分からない状況だ。営農だけでなく生活にも窮している農家も多い。もう一度青空の下で農業を営める環境、土壌を返すことを約束してほしい」と、当面の補償や生活の糧とともに将来的な補償についても要求した。
 JA宮城中央会の菅原章夫副会長は、福島県に近い南部でも放射性物質の濃度が高まっていることにふれ、「風次第では、数値があがるという懸念がある。多くの住民が見えない恐怖に不安を抱いている」と現地の思いを伝えた。


◆「原子力災害賠償法に従って対応する」東電

 農畜産物などの風評被害について、JA茨城中央会の石嵜征夫副会長は「農家はこの先どのような作物を選定し、播種すればいいのか悩んでいる。これまで東電からは何の見通しも謝罪もなく、怒り心頭だ」と憤りを露にし、JA栃木中央会の高橋一夫会長は、栃木県で出荷制限が出された3品種が系統出荷だけでも1日1億円の減収だと具体的な被害を述べ、「農家の生活がままならない状態。原発を早く収束させてもらい、迅速に仮払いなどの対応をしてほしい」と要求した。
 JA群馬中央会会長の奥木功男会長はJAグループが3月末で1回目の被害をとりまとめていることを伝え「結果が出次第、仮払いなどで早急に対応すべきだ」と強調した。
 JA埼玉中央会の江原正視会長は「埼玉県でもすべてモニタリングを行い基準値を超える数値は出ていないが、関東近辺の野菜がすべて売れない、買ってもらえないという状態。因果関係は福島原発にある」と主張。JA千葉中央会の林茂壽会長は「言葉でなく、形として1日も早く誠意を見せてほしい」と東電の対応に苦言を呈した。
 これら現場からの訴えをうけて東電の廣瀬常務は「各地の被害と補償については、原子力災害賠償法にのっとって細部にわたり対 応する」と述べた。

 

現場からの訴えに頭を下げる東電の廣瀬常務ら

 

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現場からの訴えに頭を下げる東電の廣瀬常務ら


◆言葉だけでは納得できない

 面会後、茂木会長は「風評被害、土壌汚染ととどまるところを知らない。にも関わらず加害者、東電は農業者に何の謝罪も説明もなく、現在まで至ってきた」と強調。記者団から「今まで何の説明もなかったのか?」と改めて問われると「何の説明もない。大変遺憾だ。われわれが出向いてきて、初めてこういう場ができたということに対しても、大変、怒りを覚えている」と訴えた。
 また、庄條会長は「わが県民、被災者は県内をあちこち(避難し)泊まるところすらままならない状況で、県外にも避難している。そんななかで私どもの抗議の声を、同胞の声を会長や社長が出ないで、常務がわれわれの声を(東電会長と社長に)代弁するということだった。非常に残念であり、怒り心頭に発している。
 われわれの思いを考えれば、社長が、会長が出て、まさにお答えをしていただくのが加害者としての正当なかたちではないか」と冒頭だけ社長が姿を現した東電の対応を批判した。
 清水社長が対応したのが1階のロビー、その後、JAグループが被害実態を訴えたのはロビー内にある小会議室だった。取材陣は入りきれず「なぜもっと広い部屋を用意しないのか」と東電社員に抗議する記者も。まさに「玄関先」の対応だった。
茂木会長は「徹底的に補償をしていただくというのが私どもの一貫した姿勢だ。
 (今日の)回答は、誠意を尽くしてやります、だったが、ただ言葉だけの回答ではわれわれは納得できない。
 まだまだ被害がどこまで広がるのか、まったく予想がつかない。今日は第1回めの抗議だが、2回、3回、4回、5回、われわれは東電に出向いて要求を続けていく」と語った。



【福島第一原子力発電所事故災害に関する抗議】

 東京電力の福島第一原子力発電所の事故災害により、原発周辺地域の多くの農業者は、大切な住まいや農地、作物や家畜も放置したまま、避難せざるを得ない事態となっている。また、放射能漏出により、多くの地域で主要な農畜産物の出荷が停止、あるいは風評にさらされ、農業者は収入が途絶え、経営の継続だけでなく、生活の維持すら困難な状況に追い込まれている。
 本来であれば、地域医療の中核として被災者にもっとも必要とされる厚生連病院や、被災者の救援・復興支援に大きな役割を果たす農業協同組合も、原発の近隣地域では退避を余儀なくされ、組織の存立も危機にある。
 さらに、土壌汚染や今も続く放射能漏出によって作付制限を課され、長期の営農停止、さらには離農も考えざるを得ない状況に直面し、東京電力に対する怒りと責任追及の声は、峻烈を極めている。
 未曾有の地震と津波による被害の上に、原子力発電所事故災害により、東北・関東の農業そのものの存立が脅かされ、我が国の食料供給が大きく損なわれかねない危機にあることを、東京電力は厳しく受け止めるべきである。
 東京電力は、このような甚大な被害を農業者・農協組織に及ぼしていながら、今日にいたるまで、何らの説明、謝罪、賠償に向けた対応を示してこなかった。
 我々は、このような東京電力の姿勢を、断じて許すことはできない。東京電力に対し、激しい怒りをもって強く抗議する。
 東京電カは、農畜産物の出荷停止や風評により生じた損害、土壌汚染による長期の営農停止や離農等の損失をはじめ、原子力発電所の事故災害により発生したすべての被害に対し、速やかな賠償を行う責任を負い続けなければならない。
 東京電力は、これまでの態度をあらため、迅速な一時金の支払など我々の請求に誠意をもって応えるとともに、一刻も早い原発災害の終息に向けて万全を期すよう、強く求めるものである。

平成23年4月14日
東京電力株式会杜
代表取締役会長 勝俣恒久 殿
代表取締役社長 清水正孝 殿


東日本大震災復興・再建対策JAグループ中央本部
福島県農業協同組合中央会
茨城県農業協同組合中央会
栃木県農業協同組合中央会
群馬県農業協同組合中央会
埼玉県農業協同組合中央会
千葉県崇業協同組合中央会

(2011.04.14)