◆被害額20兆円を見込む
2011年度の実質経済成長について、日通総研は当初「外需の伸び悩みや内需の足踏みなどを背景に、2011年度半ばまで調整局面が続くものの、年度後半には外需の盛り上がりに伴い生産等も上向くことにより、成長率も持ち直す」とみて「1.7%と予測」していた。
しかし、東日本大震災および東電福島第一原発事故の発生が「日本経済に対して深刻なダメージを与えることは不可避」だとして再度予測を行った。
ただし、被害者数、交通・物流インフラや建造物の損壊など、被害状況は徐々に明らかになりつつはあるが、全容は依然として不明であること。さらに原発事故にいたっては事態収拾の目途すらたたない状況にあるため、3月末現在における限定された情報等をベースに行った予測であるとした。
予測をする主要な前提として▽直接被害総額約20兆円(原発事故は含まず)▽毀損した民間建築物、民間企業設備、公共インフラ等は今後3年間で再建▽11年度補正予算規模は10兆円超(うち真水部分は5兆円程度)▽計画停電(総量規制も含める)は11年度中は6カ月実施▽この予測では便宜的に、がれきの撤去などを伴う需要を「復旧需要」、建築物・設備・インフラ等の再建・整備に向けた投資需要を「復興需要」と定義し、本格的な復旧需要は4〜6月期に、本格的な復興需要は10〜12月期より顕在化する▽発生するがれきの量は5000万〜8000万トン程度で、2年間で完全撤去、として分析している。
◆消費マインドの冷え込みも
経済面では、復興によって民間住宅投資・民間設備投資・公共投資などが増加してGDPを押し上げる反面、被災地域での生産・投資・消費などが停滞する。とくに東北3県は自動車、電気機械などの部品供給基地として重要な役割を担っており、他地域における生産・出荷の停滞を招くこと。停電や総量規制で生産活動や消費需要の縮小は避けられない。
さらに国内全体における消費マインドや企業マインドの冷え込みで消費需要や投資需要が下押しされて、GDPが1.0〜1.5%押し下げられることになり、11年度の実質経済成長率は0.2〜0.7%と辛うじてマイナス成長は避けられるものの低成長にとどまると予測した。
また、国内貨物輸送についても、当初の11年度の総輸送量を前年度比1.9%減と見込んでいたが、震災の影響で1.4〜1.9ポイント下押しされることから、3%台のマイナスは避けられないと予測した。
とくに生産関連貨物については機械や化学工業品などの大幅減で前年度比6%前後の減少になるとした。また、消費関連貨物についても、2%台の減少を予測している。