今回の震災による大津波が、沿岸地域にある農業倉庫を直撃し、大きな被害をだしたとは予測していたが、その実態はなかなか把握することができなかった。その全容の一端が「出荷前コメ3200トン津波被害 いしのまき農協」という見出しの4月10日付「河北新報」の報道で明らかになった。
本紙でもJAいしのまきの米穀課武山さんと電話でコンタクトをとることができた。
武山さんによると、石巻と東松島両市の農業倉庫9カ所に保管していた米が津波被害を受けた。うち4倉庫は倒壊などにより庫内の米すべてが流失(約1400トン)。ほかの5倉庫も浸水による被害が発生(約1800トン)しているが、1カ所ずつ修復改修しながら確認しているので、最終的に数量が確定するにはまだ時間がかかるという。
同JAの22年産米の集荷量は約3万トンだというから、1割強が津波の被害にあったということになる。
宮城県の沿岸部には多くの農業倉庫があるが、津波による被害がどれくらいあるのかは現在、調査中だという(全農宮城県本部)。
岩手県でも全農県本部が「全職員で、農業倉庫と営業倉庫を調査中」だという。4月7日のマグニチュード7.1の余震もあり、倉庫を開けて庫内にはいることで「2次災害にあう危険性もある倉庫」もあり、慎重に調査している。
全農福島県本部では、いまの段階での概数として、郡山や須賀川など浜通りの農業倉庫での「はい崩れ」などの被害が1万1000俵(660トン)。東電福島第一原発から30km圏内に11万7000俵(7020トン)あると推定。原発30km圏内については、どのような被害が発生しているのか調査することもできない。
しかも、原発事故が終息したとしても、それまでの管理ができないため「商品にはならない」と見ている。
これらの米はJAが組合員から販売委託されたもので、すでに概算金が支払われているが、「商品がなくなったり、商品にならない」からとその返済を求めることは、組合員も被災者であり難しい。しかし、JAが負担するとすれば、JAの経営そのものを圧迫することになる。
そのためJAグループでは、3月28日の岩手中央会・宮城中央会・福島中央会の3県中央会会長名での「東日本大震災による災害対策に関する要請書」や、4月14日の東日本大震災復興・再建対策JAグループ中央本部の「東日本大震災の復旧・復興および原発事故対策に関する第一次要請」で「被災JA等の施設内にあった保管米穀などへの補償支援」をするよう求めている。